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産業用カメラを使用するに当たり、様々なレンズ知識をご紹介
マシンビジョン用カメラユーザーを対象に、撮影レンズ選定について解説した技術資料です。通常では得られにくい実務的な情報を、可能な限り具体例を挙げて詳しく解説しています。
このカタログについて
ドキュメント名 | 知っておきたい撮影レンズの基礎 ~レンズ選定編~ |
---|---|
ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 1.6Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | 東芝テリー株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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技技術術情報
知っておきたい
撮影レンズの基礎
~ レンズ選定編 ~
〒191-0065 東京都日野市旭が丘 4-7-1
URL: http://www.toshiba.co.jp/ 2016 年 1 月 21 日
本資料は、予告なく変更することがあります。不明点については、弊社 WEB サイトよりお問い合わせください。
また、本資料のご利用により生じるあらゆる損害(逸失利益、第三者からの損害賠償等を含む)に関して、当社は一切の責任を負いません。
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技術情報
はじめに
マシンビジョン用カメラを有効に活用するには,目的に合ったカメラと撮影レンズを選択する必要があります。マシン
ビジョン用のカメラは USB3 VisionTM や GigE Vision®,Camera Link®1などの様々なインターフェースや撮像セン
サーによる機種のラインナップがあり,また一般的には“C マウント”に代表されるマウント構造となっているため,用途に
応じたレンズを使用できます。
撮影レンズの選定については,カメラやレンズメーカーの製品カタログに解説されているものもありますが,中には一
般的な写真撮影用レンズの選定方法のみが示され,マシンビジョン用撮影レンズの選定,及び使用方法にはそぐわ
ない結果となるものがあると感じています。
本書はマシンビジョン用カメラユーザーの方々に,撮影レンズを使用する際に必要な“撮影レンズ選定の基礎”を
知って戴くために作成したものです。できるだけ具体例を挙げ,通常得にくい実務的な情報を含めて解説していく方
針で作成しました。皆様の光学知識向上の一助になれば幸いです。
目次
はじめに .............................................................................................................................. 1
目次 ................................................................................................................................. 1
1. 撮影レンズによる結像 ........................................................................................................ 2
1.1. 結像とは ................................................................................................................. 2
1.2. レンズの主要点 .......................................................................................................... 2
1.3. 光の進む方向と各値の符号 ........................................................................................... 3
1.4. 物像関係の作図 ........................................................................................................ 3
1.5. 結像公式 ................................................................................................................ 4
2. 結像関係の計算例とレンズの選定 .......................................................................................... 5
2.1. 一般的な撮影 .......................................................................................................... 5
2.2. 近接撮影(縮小撮影) .............................................................................................. 9
2.3. 近接撮影(拡大撮影) ............................................................................................. 12
3. 被写界深度について ......................................................................................................... 14
3.1. 被写界深度 ............................................................................................................ 14
3.2. 許容錯乱円径 ......................................................................................................... 14
3.3. 被写界深度の公式 .................................................................................................... 15
4. カメラの解像度とレンズ性能 ................................................................................................. 16
4.1. カメラの解像度と画素ピッチ ............................................................................................ 16
4.2. 高解像度レンズ ........................................................................................................ 17
5. 主なカメラの光学的仕様 .................................................................................................... 19
5.1. BU/DU シリーズ ....................................................................................................... 19
5.2. BG シリーズ ............................................................................................................. 21
おわりに ............................................................................................................................. 22
索引 ................................................................................................................................ 23
1 USB3 Vision, GigE Vision, 及び Camera Link は AIA の商標または登録商標です。また本文中の会社名・製品名・規格名等の名称,ロゴは
それぞれ,各社各団体における商標または登録商標の場合があります。
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技術情報
1. 撮影レンズによる結像
撮影レンズは,被写体(物体)を撮影するために,撮像センサー上に縮小,あるいは拡大して像を結ぶ“結像”
機能があります。
マシンビジョンでは,使用目的に合ったカメラと撮影レンズを選択する必要がありますが,その選定には“結像”につ
いて理解しておく必要があります。
1.1. 結像とは
“結像”とは,撮影レンズを通して“被写体(物体)を像として結ぶ”ことをいいます。
物体のある一点から出た光線は四方八方に拡がりますが,その一点を頂点とした円錐状の光線束が撮影
レンズ内で屈折,あるいは反射し,円錐状に集光された光線束となって像として結ばれます。また別の一点,
さらにもう一点,さらに……の各点の像が集まることで被写体の形が形成されます。
この光線束のみが
結像に寄与する
被 写体
(物体)
撮像面
像
1.2. レンズの主要点
撮影レンズの選定においては先ず結像関係を検討しますが,そのためには“レンズの主要点”についての情報
が必要です。
“レンズの主要点”とは次の点のことをいいます2。
物点
像点
焦点(物体側焦点,像側焦点)
主点(物体側主点(第一主点),像側主点(第二主点))
一般の撮影レンズでは,光を通過できる方向が物体側からと像側からとの二方向あるため,“焦点”と“主
点”は各々二箇所存在します。レンズの物体側から平行光を入れた場合の主点を“像側主点”または“第二主
点”,像側から平行光を入れた場合の主点を“物体側主点”または“第一主点”といい,この二つの主点の間
隔を“主点間隔”といいます。また各主点を通って光軸に垂直な平面を“主平面”といい,主点と同様に“物体
側主平面”と“像側主平面”があります。
2 各用語については“知っておきたい撮影レンズの基礎 ~カタログ用語編~”をご参照ください。
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1.3. 光の進む方向と各値の符号
一般に光学では“光は左から右”に伝播するものと考えます。よって光路を図示する場合などは,ある基準か
ら“右側を正(+)”,”左側を負(-)”とします。また光軸に対し“上側を正(+)”,“下側を負(-)”とし
ます。
1.4. 物像関係の作図
“主点”は撮影レンズによる物体と像との関係を示すのに重要なものであり,次の性質があります。
光軸と平行に“物体側主平面”に入射した光は,“像側主平面”の同じ高さから“像側焦点”に向
かって射出される。
“物体側主点”に向かって入射した光線は,“像側主点”から同じ角度で射出される。
この性質を用いることで,物体と像の関係を作図で求めることができます。
なおこの主点の性質から“主点間”は光軸方向の長さにしか影響しないことから,粗検討の際は “主点間
隔”を省略し,下図のように物体側主点・主平面と像側主点・主平面とを重ねた状態で図示することが一般的
です。
物体側主点・主平面と
像側主点・主平面とを
光軸と平行に物体側 重ねた状態
主平面に入射する光線
○- ○+
像側主平面の同じ高さ
から像側焦点に向かって
射出される光線
○+
○-
物体側主点に 向かって
入射し,同じ 角度で ○+
○- ○+ ○+
射出される光線
■記号の説明
H : 主点
f1 , f2 : 焦点(物体側焦点,像側焦点)
f : 焦点距離(主点 H から平行光入射時の焦点までの距離)(符号は両側とも正(+))
a : 主点 H から被写体までの距離(符号は負(-))
b : 主点 H から撮像面までの距離(符号は正(+))
x : 物体側焦点 f1 から被写体までの距離(符号は負(-))
x’ : 像側焦点 f2 から撮像面までの距離(繰出し量と呼ぶ)(符号は正(+))
A : 被写体の大きさ(光軸からの高さ)(図では符号は正(+))
B : 像の大きさ(光軸からの高さ,像高と呼ぶ)(図では符号は負(-))
θ : 半画角
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1.5. 結像公式
撮影レンズの結像関係を示す公式としては,次に示す二種類があります。なお各記号,及び符号は前項
の物像関係図に示したものを用いています3。
① ガウスの結像公式
1 1 1
+ =
−? ? ?
② ニュートンの結像公式
??′ = −?2
一般には①に示す“ガウスの結像公式”が知られていますが,マシンビジョン用途では,使い勝手や接写リン
グを使用する用途との相性が良いことから②の“ニュートンの結像公式”の使用をお薦めします。
“光学倍率 M”4,“視野 FoV”,及び “画角 AoV”は次の式で求めます。
③ 光学倍率 M
? ? ? ?′
? = = = = −
? ? ? ?
“光学倍率 M”の符号が負(-)の時は倒立像を示しています。
④ 視野 FoV
? ?? −??
??? = 2? = 2 = 2 = 2
? ? ?′
ここで“像の大きさ B”には撮像素子のイメージサイズの半値(符号は負(-)5)を代入します。
⑤ 画角 AoV
−?
??? = 2? = 2 tan−1
? + ?′
④と同様に“像の大きさ B”には撮像素子のイメージサイズの半値(符号は負(-))を代入します。
また被写体が無限遠の場合は,“繰出し量 x’=0”となります。
3 符号の付け方については幾つかの流儀があります。
また当社総合カタログでは便宜上簡易的な式で示していますので,符号については本資料と異なっています。
4 ここでの光学倍率 M は,光学的には横倍率 β のことを示しています。このほかに縦倍率 α,角倍率 γ がありますが,ここでの説明は割愛します。
5 像の大きさの負号も倒立像であることを示します。
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2. 結像関係の計算例とレンズの選定
ここでは “一般的な撮影”,“近接撮影(縮小撮影)”,及び“近接撮影(拡大撮影)” について,前項の
結像公式により,結像関係の計算例と用途に応じた撮影レンズの選定方法について説明いたします。
2.1. 一般的な撮影
(1) 被写体が無限遠にある場合の画角と視野
撮影用途において,一般に“無限遠”とはレンズを繰出さなくとも(x’=0)ピントが合う距離のことをいいます
が,ここでは視野の大きさを容易に測定できないほど大きく映る撮影距離といたします。
・ 例題(1)
当社製カメラ BU130CF 相当の撮像センサーが付いたマルチコプター形無人航空機(いわゆるドローン)を
使用したときに撮影できる“画角”はどのくらいか?
カメラ・撮影レンズの仕様
(1) イメージサイズ: 対角 6 mm(1/3 型)
(2) 画素数: 1.3M ピクセル(1280(H)×960(V))
正方格子配列
(3) 焦点距離: 4 mm
(4) F ナンバー: F2
・ 計算例(1)
画角 AoV の計算式については“1.5. 結像
公式”に示しましたが,改めて物像関係の図と
計算式を示します。
■記号の説明
H : 主点
f1 , f2 : 焦点(物体側焦点 f1,像側焦点 f2)
f : 焦点距離(主点 H から平行光入射時の焦点までの距離)
a : 主点 H から被写体までの距離
b : 主点 H から撮像面までの距離
x : 物体側焦点から被写体までの距離
x’ : 像側焦点から撮像面までの距離(繰出し量と呼ぶ)
A : 被写体の大きさ(光軸からの高さ)
B : 像の大きさ(光軸からの高さ,像高と呼ぶ)
θ : 半画角
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−?
??? = 2? = 2 tan−1
? + ?′
ここでは撮影距離が無限遠のため“繰出し量 x’ =0”となります。これは撮像面の位置と撮影レンズの焦点の
位置が一致していることを意味しています。もしレンズとカメラとのフランジバックが焦点深度以上にずれていると,
繰出し過ぎ,あるいは繰り込み過ぎの状態と同じで,無限遠の画像がピンぼけとなってしまいます。
像の大きさを示す像高 B はイメージサイズから求めます。
今回使用するカメラはイメージサイズの対角寸法と水平(H)及び垂直(V)方向の画素数が明記されて
いますので,先ずは対角(D)方向の画角を求め,次に水平,垂直の順で計算することにいたします。
(1) 対角(D)方向画角
対角方向の像高 BD はイメージサイズ 6 mm の半分の値(符号は負(-)とします)ですから
6
?? = − = −3 mm
2
よって対角画角 AoVD は
−? −(−3)
??? = 2 tan−1 ?
= 2 tan−1
? = 73.7°
? + ?′ 4 + 0
となります。
(2) 水平(H),垂直(V)方向画角
次にセンサーサイズの縦横の像高を画素数より求めます。
この撮像センサーは 1 画素の寸法の縦横比が等しい正方格子配列のため,垂直方向の画素数 NV
が 960 画素,水平方向の画素数 NH が 1280 画素であることから,対角方向の画素数 ND は
? = √9602
? + 12802 = 1600 画素 D=5
となります。
V=3
各方向のイメージサイズの比(アスペクト比)は
??:??:?? = 960:1280:1600 = 3:4:5 H=4
ですので,垂直方向の像高 BV,及び水平方向の像高 BH は,対角方向の像高 BD よりこの比を用い
て求められます。
??:??:?? = 3:4:5 = −1.8: − 2.4: − 3 (mm)
よって垂直画角 AoVV,及び水平画角 AoVH は
−?? −(−1.8)
???? = 2 tan−1 = 2 tan−1 = 48.5°
? + ?′ 4 + 0
−?
−1 ? −(−2.4)
???? = 2 tan = 2 tan−1 = 61.9°
? + ?′ 4 + 0
となります。
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(2) 被写体が有限距離にある場合
・ 例題(2)
例題(1)のドローンを使用して,10 m の高さから真下を 高さ 10 m
撮影する場合の視野はどのくらいか?
・ 計算例(2)
この場合は被写体が有限距離にありますので,画角だけではなく視野 H 方向視野 V 方向視野
FoVH
も求めることができます。 FoVV
但し,あくまでも理想的な条件での概算であり,実際の大きさは歪曲など収差の影響や,被写体に対する
カメラの設置角度ずれによる変形(キーストン歪6など)がありますので注意が必要です。
(1) 撮影距離 x による方法
視野 FoV の計算式については画角同様に“1.5. 結像公式”に示しましたが,ここでは撮影距離が判
っていますのでこれを用いた式を使用します。
??
??? = 2? = 2
?
この式を使用する場合は撮影距離 x にどの値を用いるかが問題となります。本来,x は物体側焦点か
ら被写体までの距離を示していますが,本例題では”10 m の高さ”となっており,何処を基準としてい
るのかが明確ではありません。このことは x≒a とするか x=a-f とするかの違いですが,このような場合は
撮影レンズの焦点距離と撮影距離とのバランスで考え,先ずは次のように判断し概算値として求めま
す。
撮影距離が焦点距離に対し十分に大きい場合は,設問にある撮影距離をそのまま x とします。
撮影距離が焦点距離に対し近い場合は,設問にある撮影距離から焦点距離を引いた値を x とし
ます。
この場合は焦点距離 f が 4 mmに対し,撮影距離が 10 m(=10000 mm)ですので前者を採
用し,x=-10000 mmとします(x の符号は負(-)をとります)。
よって垂直視野 FoVV,及び水平視野 FoVH は
??? −1.8 ∙ −10000
???? = 2 = 2 = 9000 mm = 9 m
? 4
??? −2.4 ∙ −10000
???? = 2 = 2 = 12000 mm = 12 m
? 4
となります。
6 カメラと被写体が光軸に垂直でない場合は,画面上下,あるいは左右で光学倍率が異なることになるので,視野は台形状(あるいは台形の複合
形状)に変形します。台形に変形することをキーストン歪(keystone distortion),あるいは梯形歪(trapezoidal distortion)といいます。
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(2) 画角による方法
視野は画角より求めることもできます。
画角 AoV の式は
−?
??? = 2? = 2 tan−1
? + ?′
ですが,例題では撮影距離が有限のため繰出し量 x’ を求める必要があります。
繰出し量 x’ の計算については “1.5. 結像公式”にニュートンの結像公式として示しましたものを用い
ます。ニュートンの結像公式は
??′ = −?2
ですので,繰出し量 x’ を求める式は
?2
?′ = −
?
となります。例題では焦点距離 f が 4 mm,撮影距離 x が 10 m ですので
?2 42
?′ = − = − = 0.0016 mm=1.6 μm
? −10000
となります7。
これを用いて垂直画角 AoVV,水平画角 AoVH を求めます。
−?
−1 ? −(−1.8)
???? = 2?? = 2 tan = 2 tan−1 = 48.438°
? + ?′ 4 + 0.0016
−?? −(−2.4)
???? = 2?? = 2 tan−1 = 2 tan−1 = 61.907°
? + ?′ 4 + 0.0016
画角 AoV から視野 FoV を求める式は
???
??? = 2? = 2(−? + ?) tan ? = 2(−? + ?) tan
2
で示されます。よって,垂直視野 FoVV,水平視野 FoVH は
???? 48.438°
???? = 2(−? + ?) tan = 2{−(−10000) + 4} tan = 9000 mm
2 2
= 9 m
???? 61.907°
???? = 2(−? + ?) tan = 2{−(−10000) + 4} tan = 12000 mm
2 2
= 12 m
となります8。
7 本計算結果の 1.6 μm という量は,焦点距離 f に対して十分に小さく,またカメラやレンズ製造時の許容差に対しても小さいことから通常無視できる
値ですが,ここでは例題として計算を進めていきます。
8 焦点距離 f は撮影距離 x に対し十分に小さいので無視できる量ですが,ここでも上記同様に例題として計算しています。
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2.2. 近接撮影(縮小撮影)
“2.1. 一般的な撮影”の項では,主に風景撮影や監視用途で使用する比較的遠方の被写体に対する
計算方法を示しましたが,ここでは FA やマシンビジョン用途で使われる撮影距離が近い場合についての計算方
法をご説明します。
・ 例題(3)
当社製カメラ DU657M を使用してハンドリングロボットの開発を進めている。視野が 125 mm 角,撮影距
離が 300 mm 程度の場合,適した撮影レンズの焦点距離はどのくらいか?
カメラの仕様
(1) イメージサイズ: 対角 18.1 mm(1.1 型)
(2) 画素数: 6.5M ピクセル(2560(H)×2560(V))
(3) 撮像面積: 12.8(H)×12.8(V) mm
(4) 画素サイズ: 5.0(H)×5.0(V) μm
・ 計算例(3)
使用するカメラと視野が明確な場合は,先ず必要な光学倍率 M を求めてからレンズの選定を行います。
(1) 光学倍率
光学倍率 M は下式のとおり被写体の大きさ A と像の大きさ B の比で求められます。
?
? =
?
例題では撮像面,視野ともに縦横比(アスペクト比)が 1:1 の正方形ですので,像と被写体の大
きさとして水平方向あるいは垂直方向のどちらを使っても同じ光学倍率となりますが,ここでは垂直方
向(V 方向)の値を用いることにします。よって
? −12.8
? ⁄
? 2
? = = = −0.1024
?? 125⁄2
となります。ここで像の大きさ B は負の符号(-)を取りますので,光学倍率 M の符号も負(-)となり,
倒立像であることを示しています。また本例題は縮小撮影ですので,光学倍率の絶対値が 1 以下と
なります。
(2) 焦点距離
次に撮影レンズの焦点距離 f を求めますが,撮影距離と光学倍率 M が判っていますので,光学倍率
M の式を変形して焦点距離 f を求めます。
?
? =
?
より
? = ??
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計算例(2)と同様に,ここでも撮影距離と xとの関係が不明確ですが,現段階では使用するレンズ
が決まっておりませんから焦点距離 f も判りませんので,撮影距離を x とし x=-300 mm とします。
よって
? = ?? = −0.1024 ∙ −300 = 30.72 mm
となります。
市販の C マウントレンズですと,f=25 mm か f=35 mm が一般的にありますので,これらから選ぶこ
とにします。
(3) イメージサークル
ここで使用するカメラ(DU657M)のイメージサイズは対角 18.1 mm(1.1 型)です。本カメラのマ
ウントは C マウントですが,一般に C マウントは対角 16 mm(1 型)以下のイメージサイズに適して
おり9,市販されている C マウントレンズの殆どが φ16 mm 以下のイメージサークルのものです。
仮にカメラのイメージサイズより撮影レンズのイメージサークルが小さい場合は下記のようになります。
光学倍率については撮影レンズの焦点距離と撮影距離で決まりますので,基本的には影響あ
りません。
画面隅に充分光が到達しないため, “蹴られ”と呼ばれる周囲が暗くなる現象や“ピンぼけ”な
ど,(レンズメーカーの考える仕様に対して)光学的な不具合が生じます。
蹴られ 蹴られ
像面照度 像面照度分布
よって,基本的にはカメラのイメージサイズ以上のイメージサークルを持つ撮影レンズから選択することに
なります。本例題の場合では,最近は 1.1 型や”フォーサーズ(4/3 型)”のイメージサークルを持つマ
シンビジョン用撮影レンズが増えていますので,そちらから選ぶことをお薦めします。
なお,特に焦点距離が長めの撮影レンズの場合では,イメージサークルに余裕があり,レンズの仕様
以上のイメージサイズのカメラにも使用できることがありますので,実機にて確認してみるのも手です10。
因みにカメラのイメージサイズより大きいイメージサークルを持つレンズを使用する場合は,視野や光学
倍率は変わりませんが,有効像円の中央寄り部分を使用することになりますので,画面周辺部も光
量落ちや解像力の低下の少ない,比較的良い光学性能が得られます。
9 日本インダストリアルイメージング協会規格 “JIIA LE-002-2013: マシンビジョンカメラ用レンズマウント ― レンズマウント径”,および日本
インダストリアルイメージング協会指針 “JIIA LER-004-2010: 各イメージサイズ区分に対する推奨のメカニカルインターフェース”が参考になります。
10 例えば 1.1 型カメラに 2/3 型用 f=50 mm メガピクセルレンズが使用できる可能性があるなど。
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(4) 撮影距離
これまでに,暫定的ですが撮影レンズの焦点距離が決まりましたので,物体側焦点から被写体までの
距離である x が求まります。
焦点距離を求めた式を変形すると
?
? =
?
よって,f=25 mm のときの撮影距離 x25 と f=35 mm のときの撮影距離 x35 は
?25 25
?25 = = = −244.141 mm
? −0.1024
?35 35
?35 = = = −341.797 mm
? −0.1024
となります。
(5) 繰出し量
今までの計算で,物体側主点からを被写体までの距離を構成する f 及び x が確定しましたので,次に
撮像センサー側の距離を構成する繰出し量 x’ を求めます。
x’ を求める式は,x を求めたときと同様に光学倍率 M の式を変形します。
?′
? = −
?
より
?′ = −??
f=25 mm のときの撮影距離 x’25 と f=35 mm のときの撮影距離 x’35 は
?′
25 = −?25? = −25 ∙ −0.1024 = 2.560 mm
?′35 = −?35? = −35 ∙ −0.1024 = 3.584 mm
となります。
この繰出し量 x’ は,ピント調整する際に必要な像の移動量を示しており,ピント調整が可能な撮影
レンズでは“フォーカスリング(距離環)”をこの量だけ,ピント調整が出来ないレンズではこの厚さの“接
写リング”をレンズとカメラとの間に挿入することで,像の位置を撮像面まで動かしピントを合わせることが
できます。
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2.3. 近接撮影(拡大撮影)
“2.2. 近接撮影(縮小撮影)”の項では,光学倍率の絶対値が 1 より小さい縮小撮影の場合の計算
方法を示しましたが,ここではルーペ11や顕微鏡のように拡大して撮影する場合についての計算方法をご説明し
ます。
・ 例題(4)
当社製カメラ BU406MCF を使用して外観検査装置の開発を進めている。視野が 5 mm 角の場合,適
した撮影レンズはどのようなものか?
カメラの仕様
(1) イメージサイズ: 対角 15.9 mm(1 型)
(2) 画素数: 4M ピクセル(2048(H)×2048(V))
(3) 撮像面積: 11.26(H)×11.26(V) mm
(4) 画素サイズ: 5.5(H)×5.5(V) μm
・ 計算例(4)
使用するカメラと視野が明確な場合は,先ず必要な光学倍率 M を求めてからレンズの選定を行います。
(1) 光学倍率
例題では撮像面,視野ともに縦横比(アスペクト比)が 1:1 の正方形ですので,例題(3)と同
様の方法で光学倍率を求めます。
この場合,像と被写体の大きさとして水平方向あるいは垂直方向のどちらを使っても同じ光学倍率 M
となりますが,ここでは垂直方向(V 方向)の値を用いることにします。よって
? −11.26
? ⁄
? = = 2
? = −2.252
?? 5⁄2
となります。ここで像の大きさ B は負の符号(-)を取りますので,光学倍率 M の符号も負(-)となり,
倒立像であることを示しています。また本例題は拡大撮影ですので,光学倍率の絶対値が 1 以上と
なります。
マシンビジョン用レンズとしては,切の良い光学倍率のものが入手しやすいので,ここでは仮に M=-2 と
します。この場合は像の大きさは 5 mm 角の 2 倍の 10 mm 角となり,撮像センサーの周囲に若干
余裕ができます。
(2) 画素分解能
撮像センサーの一画素あたりの視野の大きさのことを“画素分解能”といい,これにより用途に応じたカ
メラの画素数(解像度)を求めることができます。
本例題において,光学倍率 M=-2 のレンズを使用する場合の垂直視野 FoVV は
11 本書では説明いたしませんが,ルーペは虚像をみるため撮影レンズのように像を結びません。また正立像なので光学倍率の符号は正(+)です。
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? −11.26
? ⁄
???? = 2? = 2 = 2 2 = 5.63 mm
? −2
となります。
垂直方向の画素分解能 RV は,垂直視野 FoVV を撮像センサーの垂直方向の画素数 NV で割り付け
ていることになりますので,
???? 5.63
?? = = = 0.00275 mm = 2.75 μm
?? 2048
となります12。
なお本カメラの画素は縦横比が 1:1 の正方格子配列ですので,水平方向の画素分解能 RH も同じと
なります。
(3) マクロレンズ
本例題に対しては,光学倍率 M=-2 倍の撮影レンズを使用すればよいことが判りました。
マシンビジョン用レンズとしては,拡大撮影や接写に特化した“マクロレンズ”とよばれる撮影レンズが市
販されています。
マクロレンズには,ワーキングディスタンスが一定で各種光学倍率がシリーズ化されているもののほか,
高解像度カメラ用やテレセントリックレンズもありますので,用途に応じたレンズを選定できます。
(4) 顕微鏡対物レンズ
拡大撮影では,光学倍率によっては顕微鏡の対物レンズを使用することもできます。
顕微鏡対物レンズは,対応する顕微鏡形式により“有限補正光学系”と“無限遠補正光学系”に大
別され,“有限補正光学系”は一般のレンズ同様にそれ単体で結像することができますが,“無限遠
補正光学系”は“結像レンズ”や“チューブレンズ”とよばれる補助レンズを必要とします。
顕微鏡対物レンズにカメラを取付けるには,カメラと同じマウントを持つ既定の長さの鏡筒が必要です。
(5) 一般的な撮影レンズでの使用
例題(1)~(3)で使用してきたような一般的な撮影レンズ(汎用レンズ)で拡大撮影を行う場
合は,撮影距離(WD)がレンズの最至近距離(MOD)よりも近いことになることが多いため,繰
出し量 x’ に相当する長さの“接写リング”が必要です。
仮に焦点距離 f=25 mm の C マウントレンズで光学倍率 M=-2 倍としたとき,繰出し量 x’ は
?′ = −?? = −25(−2) = 50 mm
となりますので,50 mm の長さの接写リング(チューブ)が必要です。
なお一般的な撮影レンズは光学倍率が等倍より小さい縮小光学系として設計されているため,倍率
が高くなるほど光学性能が低下します。そこで光学倍率が等倍以上の撮影では,撮影レンズを逆向き
(リバース)に取り付け,物体と像とを入れ替えて拡大光学系とすることで,光学的に有利な使い方
ができます。例えば 0.5 倍の縮小光学系レンズは,リバースで使用する13ことで 0.5 の逆数である 2
倍(=1/0.5)の拡大光学系となります。
12 光学倍率 M は-2 倍ですので,画素サイズの 5.5 μm を 2 で割っても同じ値の物側分解能が求まります。
13 レンズを逆向きに取り付けるアダプターを“リバースリング”として販売しているレンズメーカーもあります。
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3. 被写界深度について
撮影レンズを使用するに際し,前述の結像関係のほか“被写界深度”の計算が必要となる場合があります。ここ
では撮像センサーに応じた被写界深度の算出方法を説明いたします。
3.1. 被写界深度
撮影レンズは,物体を像として結ぶ働きをしますが,この時“点を点として結像させる”必要があります。直感
的にピントの合う点は一点であり,そこから離れるにつれ”ぼけ”が大きくなることが想像できると思います。しかし
実際のカメラシステムでは,光軸に沿った奥行き方向でみると,ピントの合う範囲は一点ではなく,被写体の前
後でピントがぼけていないと見做せるある程度の幅があり,これを“被写界深度”といいます。
“被写界深度”内にあるものは“ぼけずにピントが合って見える”ため,奥行きのある被写体を撮影する際に
は深度を有効に活用できます。
3.2. 許容錯乱円径
“被写界深度”を算出する際に使用するパラメーターとして“許容錯乱円径”があります。ここでいう“錯乱円”
とは,レンズにより点が結像された際の円形の像のことですが,撮像センサーがぼけとして認識できない最小の
大きさを特に“許容錯乱円径”といいます。
“許容錯乱円径”は撮像センサーの“画素ピッチ”,あるいは“エアリーディスク径”といわれるレンズの光学的な
結像限界で決まり,“画素ピッチ”,あるいは“エアリーディスク径”の大きい方が“許容錯乱円径”になります14。
・ 画素ピッチ
撮像センサーの画素間隔のことを“画素ピッチ”,または“画素寸法”,“画素サイズ”といいます。
当社の総合カタログでは“画素サイズ”として示していますが,カタログに明記していないカメラメーカーもありま
すので,この場合は“イメージサイズ”と“解像度”より求めますが,代表的なイメージサイズ,及び解像度におけ
る画素ピッチについては“4.1. カメラの解像度と画素ピッチ”の項で説明いたします。
・ エアリーディスク
光には波の性質があり,理想的なレンズでも絞りにより回折してしまうため,焦点は一点にはならずある大き
さの明るい円盤状となります。この円盤を”エアリーディスク”といいます。
エアリーディスク径 エアリーディスク径
φ5.36 μm φ10.72 μm
@550 nm @550 nm
エアリーディスク F4 の時の強度分布 F8 の時の強度分布
14 日本インダストリアルイメージング協会技術報告書 “JIIA LER-006-2010: 焦点深度のパラメーター”による。
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エアリーディスクの径 DAiry は,光の波長 λ と F ナンバーF(正確には光学倍率を加味した“実効 F ナンバー
Feff”)から次式により求められます15。
????? = 2.44 ? ⋅ ???? ≈ 1.34 ???? (at ? = 0.55 μm)
DAiry: エアリーディスク径 (μm)
λ: 波長 (μm)
Feff: 実効 F ナンバー(=F (1+M))
M: 光学倍率(×)
この式によると,実効 F ナンバーFeff が大きくなるとエアリーディスク径も大きくなり,点像がぼけることが判りま
す。この現象を“小絞りぼけ”といいます。例えば実効 F ナンバーFeff が F4 のとき,波長 λ が 550 nm でのエアリ
ーディスク径は 5.36 μm となります。これは画素ピッチが 4 μm の撮像センサーに F4 のレンズを使用することは
カメラの高精細性能を生かし切れないことを意味しています。
3.3. 被写界深度の公式
“被写界深度”は撮影レンズの”F ナンバー”と撮像センサーの”画素ピッチ”,及び“光学倍率”で決まります。
マシンビジョンで使用する一般的な撮影距離の場合,被写界深度 DoF は次の式で求められます。
2??? ⋅ ????
??? ≈
?2
DoF: 被写界深度
CoC: 許容錯乱円径
Feff: 実効 F ナンバー
M: 光学倍率
この式によると,F ナンバーが小さい(明るい)レンズ,画素ピッチの小さいセンサー,及び光学倍率が大き
い(拡大)ほど被写界深度の幅は狭くなります。なお“焦点深度”と“ニュートンの結像公式”を使っても被写界
深度を求めることができます16。
ピントを合わせた光線 像面
被写体
許容錯乱円径
被写界深度 ピントが合って見える光線 焦点深度
15 収差の無い理想的なレンズで,且つ円形絞りの場合のエアリーディスク径です。
16 ここでは省略しますが,焦点深度 dof(dof =2CoC・Feff)の片側の幅を繰出し量 x’として撮影距離 x を求めます。なお監視用途など撮影距離が長い
場合は被写体に対し手前側と奥側とで深度が異なりますので,この方法をお奨めします。
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4. カメラの解像度とレンズ性能
4.1. カメラの解像度と画素ピッチ
マシンビジョン用カメラは,各種インターフェースごとに様々なイメージサイズや解像度の機種をラインアップして
います。このため同じ解像度のカメラでもイメージサイズが異なる場合があるなど,使用する撮影レンズに必要とさ
れる解像力が異なることになりますが,ユーザーとメーカー,あるいは個々人の間においてレンズの解像力等の
仕様表記や表現に対し誤解が生じることがあります。
ここでは参考として,対角 11 mm 型(2/3 型)と対角 8 mm(1/2 型)の撮像センサーにおける,各
解像度での画素ピッチ(μm/pixel)を示します17。
各解像度における画素ピッチ(参考値) (単位:μm/pixels)
解像度 対角 11 mm型 対角 8 mm型
300K 13.8 10.0
400K 12.1 8.8
480K 11.0 8.0
800K 8.6 6.3
1M 7.6 5.5
1.3M 6.7 4.9
2M 5.4 3.9
3M 4.3 3.1
4M 3.8 2.8
5M 3.4 2.5
6M 3.1 2.3
7M 2.9 2.1
8M 2.7 2.0
9M 2.5 1.8
10M 2.4 1.8
なお当社代表的カメラの画素ピッチを“5. 主なカメラの光学的仕様”の項に示しましたのでご活用ください。
17 日本インダストリアルイメージング協会技術報告書 “JIIA LER-005-2010: 撮像素子の画素数と画素ピッチ”による。
なお本画素ピッチは撮像面のアスペクト比を“H:V=4:3”とし,総画素より計算にて求めたものです。
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4.2. 高解像度レンズ
特に画素ピッチの細かい“高精細カメラ”用として製作されたレンズとして“高解像度レンズ”があります。主に
100 万画素を超える高解像度カメラ用として使用されるため“メガピクセルレンズ”とも呼ばれます。
各レンズの対応する画素ピッチは“4.1. カメラの解像度と画素ピッチ”の項で示したピッチ相当と思われますが,
全ての撮影条件で性能を発揮できるとは限らず,ある特定条件での光学性能としている場合もあります18。
撮影レンズの光学性能を決める要因としては主に次のものがありますが,これらがレンズ設計時の条件に近
いほど,より良い性能が得られます。
・ 光学性能を決める要因(例)
(1) 波長(スペクトル分布)
(2) F ナンバー
(3) イメージサイズ
(4) 光学倍率
(5) 画角
(6) 撮影距離
(7) レンズと撮像センサー間の光学部品の光学特性,厚さ
・ 光学ローパスフィルター(OLPF)
・ 赤外線カットフィルター(IRCF)
・ 撮像センサーのカバーガラス
(8) 撮像センサーの MTF
・ 2M 用レンズを 5M カメラに使用出来るのか?
例えば,従来 2/3 型 2M カメラを使用していた外観検査装置に対して,同じイメージサイズの 5M カメラの
使用を検討する場合,今まで使用してきた 2M 用高解像度レンズが使用できるのか?という疑問をお持ちにな
られる方も多いかと思います。
これに対する回答は……“ご利用になる条件で実機評価をお願いします”……と申し上げるのが適切かと考
えます。その背景としては
(1) 従来の撮影レンズを使用するメリット(例)
・ 使用実績があるため調達や品質面での安心感がある
・ 光学的条件は同じで済むため,設置位置・方法の変更が不要
・ 5M 用レンズに比べコストが安い(高精細用になるほど高価になる傾向あり)
(2) 期待するところ
・ 画質は変わらなくとも,従来の 2M カメラよりは高解像度の画像は得られる
・ 従来のレンズの限界性能が判らないが,元々5M にも使える高性能レンズかもしれない
18 日本インダストリアルイメージング協会技術報告書 “JIIA LER-007-2012: 高精細カメラ用レンズの推奨仕様”が参考になります。
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(3) 懸念されるところ
・ 画素ピッチが小さくなるので被写界深度が浅くなる
・ 絞りを絞って(小絞りで)使用していたために,回折限界により5M カメラの性能が発揮できない
・ カメラの感度が低くなるため,より明るいレンズが必要となる
・ 撮像センサーの斜入射光感度特性19が変わり,撮影レンズの射出瞳位置が整合せずシェーディ
ングが大きくなる
・ 画面周辺部などで光学性能の粗が目立ちやすくなる
・ 5M 用レンズと比べると,やはり解像力やコントラストが不足し見劣りする
などが挙げられます。
一般論としては,より安定した画像処理を行うには高解像度カメラに対応したレンズの使用をお薦めします
が,使用条件次第では得られる結果が異なることも考えられますので,システムとしての最適化を図るうえでは
照明系も含んだ実機によるご検討をお願いいたします。
19 近年の撮像センサーには感度向上のため各画素前に“オンチップレンズ”を配置しています。このレンズにより各画素が取り込むことのできる光の角度が
決まりますが,射出瞳の短い撮影レンズでは画面周辺部での光の入射角度が大きすぎて光を取り込めず,シェーディングになることがあります。
“オンチップレンズ” は撮像センサーによって仕様が異なるほか,カメラ・撮影レンズ部の小形化のため,撮影レンズの射出瞳位置が短くてすむよう意図
的に光学特性,あるいは配置を変えているものがあります。
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5. 主なカメラの光学的仕様
5.1. BU/DU シリーズ
(1) 白黒カメラ
BU030 BU031 BU080
1/3 型 CCD 1/2 型 CCD 1/3 型 CCD
撮像デバイス
(ICX424AL) (ICX414AL) (ICX204AL)
解像度 640 (H) × 480 (V) 1,024 (H) × 768(V)
画素数 0.3M 0.8M
撮像面積 4.88 (H) × 3.66 (V) mm 6.52 (H) × 4.89 (V) mm 4.81 (H) × 3.62 (V) mm
画素サイズ 7.4 (H) × 7.4 (V) μm 9.9 (H) × 9.9 (V) μm 4.65 (H) × 4.65 (V) μm
BU130 BU132M BU205M
1/3 型 CCD 1/1.8 型 GS-CMOS 2/3 型 GS-CMOS
撮像デバイス
(ICX445AL) (EV76C560) (CMV2000)
解像度 1,280 (H) × 960 (V) 1,280 (H) × 1,024 (V) 2,048(H) × 1,088(V)
画素数 1.3M 1.3M 2M
撮像面積 4.86 (H) × 3.62 (V) mm 6.78 (H) × 5.43 (V) mm 11.26 (H) × 5.98 (V) mm
画素サイズ 3.75 (H) × 3.75 (V) μm 5.3 (H) × 5.3 (V) μm 5.5 (H) × 5.5 (V) μm
BU238M BU302MG BU406M
1/1.2 型 GS-CMOS 1/1.8 型 GS-CMOS 1.0 型 GS-CMOS
撮像デバイス
(IMX174) (IMX252) (CMV4000)
解像度 1,936(H) × 1,216(V) 2,048(H) × 1,536(V) 2,048 (H) × 2,048 (V)
画素数 2.3M 3M 4M
撮像面積 11.25 (H) × 7.03 (V) mm 7.07 (H) × 5.30 (V) mm 11.26 (H) × 11.26 (V) mm
画素サイズ 5.86 (H) × 5.86 (V) μm 3.45 (H) × 3.45 (V) μm 5.5 (H) × 5.5 (V) μm
BU505MG DU657M
2/3 型 GS-CMOS 1.1 型 GS-CMOS
撮像デバイス
(IMX250) (TELI Original)
解像度 2,448 (H) × 2,048 (V) 2,560 (H) × 2,560 (V)
画素数 5M 6.5M
撮像面積 8.45 (H) × 7.07 (V) mm 12.8 (H) × 12.8 (V) mm
画素サイズ 3.45 (H) × 3.45 (V) μm 5.0 (H) × 5.0 (V) μm
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