カンチレバー(英語: cantilever)は、一端が固定端、他端が自由端とされた構造体(特に梁)である。
概要
キャンティレバー、あるいはこの省略形として
キャンティと呼ばれることもある。梁の構造が代表的であり、これは日本語では
片持ち梁、
片持ちばり(かたもちばり)と呼ばれる。カンチレバーは(通常は垂直な)支持部材に一端が固定されており、かつもう一端が突出した梁やプレートなどの剛性構造要素を指す。水泳プールにある飛び込み板は、カンチレバー構造の代表的な形である。支持部材との接続は、壁などの平らで鉛直方向に伸びた面に対して行うこともでき、カンチレバー自体をトラスまたはスラブで構成することもできる。上に物や人が乗るなどして荷重を受けると、カンチレバーはそれをモーメントやせん断応力の形で支持部材に伝達する。カンチレバー構造は、支柱間に荷重をかけて両端で支えられる構造、例えば支柱および鴨居などのシステムに見られる単純支持梁などとは対照的に、外的な支えなしに構造を張り出すことを可能にする。
建築におけるカンチレバー
特にカンチレバー橋やバルコニーに広く見られる(持ち送りを参照)。カンチレバー橋では、カンチレバーは通常対として作られるが、各カンチレバーは中央部の一端を支えるために使われている。スコットランドのフォース橋はカンチレバートラス橋の一例である。伝統的な木造骨組みの建物の片持ち梁は桟橋またはforebayと呼ばれ、アメリカ合衆国南部の歴史的な納屋のタイプは丸太建設の片持ち梁の納屋である。部分的に構築された構造はカンチレバーを作り出すが、完成した構造はカンチレバーとしては機能しない。この方法は一時的な支柱や支保工を使用して建造中の建造物を支えることができない場合(例えば、交通往来の激しい道路や川の上、深い谷など)に非常に効力を発揮する。そのためトラスアーチ橋(ナバホ橋を参照)などは、スパンが互いに達するまで片側からカンチレバーとして構築され、最終的に結合する前に圧縮させる。これが主な利点の一つであるので、斜張橋はカンチレバーを利用して作られている。多くの箱げた橋はセグメント橋、または短い断片で作られており、これらのタイプの構造は橋が単一の支持体から両方向に構築されているバランスの取れたカンチレバー構造に適している。カンチレバーのあまり目立たない例としては、ガイワイヤーのない自立型(垂直型)の電波塔、および煙突などがある。構造的な特性が異なる二つの部分をまたぐ部材(例えば渡り廊下や二つの建物の間にかかる屋根など)では、中間部で構造的に切断したカンチレバーとすることで、建物同士の間で応力が伝わらないようにする場合もある。これは地震などの際にそれぞれの建物からの力が集中して破壊されることを防ぐためである。この場合、接続部はエキスパンションジョイントで外気や雨水を遮断することもある。鉄筋コンクリート構造の建物などでは、コンクリートのクリープなどにより次第にカンチレバー部が垂れてくることがある。中にはバルコニーが脱落した事例もあり、構造強度のみならず、適切な防水によって構造体内への雨水の浸入を防ぐなど、慎重な設計と施工が要求される。 カンチレバー構造を生かした建築物としては、フランク・ロイド・ライト設計による(滝の上に張り出すように建つ)「カウフマン邸(落水荘)」やコンスタンチン・メーリニコフ設計による「ルサコフ労働者クラブ」などが広く知られる。他にもバルコニーや庇にはカンチレバーが多く使われる。リーズにあるスタジアム、エランド・ロードのイーストスタンドは、完成した時点で、17,000人の観客を収容する世界最大のカンチレバースタンドであった。 オールド・トラッフォードのスタンドの上に建てられた屋根はカンチレバー構造を使用しているため、支柱がフィールドの景色を遮らない。老朽化で近年取り壊されたマイアミスタジアムは、観客席の上に同じような屋根があった。ヨーロッパ最大の片持ち屋根はニューカッスル・ユナイテッドFCのホームスタジアム、 ニューカッスル・アポン・タインのセント・ジェームズ・パークにある 。