人造砥石の研磨剤として使われる砥粒は、JIS R 6111:2005によれば、大きく分けて酸化アルミニウム(アルミナ、アランダム)を原料とするものと、炭化ケイ素(カーボランダム)を原料とするものの2つに分けられる。硬度としては炭化ケイ素系の方が大きく、主として荒砥から中砥に使われ、それより硬度が落ちるがじん性(破壊されにくさ)に優れるアルミナ系は中砥から仕上げ砥に使われる。この2種類以外に、人造ダイヤモンドや立方晶窒化ほう素も研磨剤として用いられる。
(1)酸化アルミニウム(アルミナ)系
A 褐色アルミナ研磨剤 もっとも一般的に使用される研磨剤。
WA 白色アルミナ研磨剤 硬度が高くかつ破砕性に富むため、主に仕上げ砥で使用。
PA 淡紅色アルミナ研削材 WAよりじん性が高く、形状保持力に優れる。
HA 解砕型アルミナ研削材(灰色~青色) コランダムの単一結晶から成る。結晶粒単位で解砕(細かい粉の固まりをほぐして粉に戻すこと)しているため破砕しにくく、精密な研削に適する。
一般的な陶器と同じく可溶性粘土や長石を1300℃程度の高温で焼成してガラス状の物質を形成するもの。その製法をビトリファイド法といい、JIS R 6210:2006で規定されている。ビトリファイドは英語でvitrifiedであり、「ガラス化した、陶化した」という意味。ラテン語のvitrum(ガラス)が語源。(ちなみに日本語でガラス細工を表すビードロは、ラテン語のvitrumがポルトガル語のvidroになり、それが日本に伝わったもの。)長所として焼き固めてあるので硬度があり、経年変化も少なく化学的に安定している。反面強い衝撃で割れることがあり、また細孔の多い多孔質の状態になることが多く、十分吸水させるのに10分~30分程度の時間を要する場合がある。なお、ビトリファイド法以外の製法で作られた砥石でも名称に「セラミック」を使っている場合があり、注意が必要。
(2)セメント系
結合剤として酸化マグネシウムと塩化マグネシウムによる一種のセメント(マグネシアセメント)を使って、それが化学反応で硬化するのを利用したもの。JIS R 6219:2006で「マグネシア研削といし」として規定されている。ビトリファイド法に比べ、焼き固めるというプロセスが無いため収縮が小さく、砥粒径を小さくした場合の寸法管理がしやすいため、特に中砥や仕上げ砥で多く使われる。また酸化マグネシウムは硬化した後でも水に溶けるため、使用前に長時間水に漬ける必要がなくすぐに使え、また刃物への当たりも柔らかいという利点がある。しかし逆に長時間水に接すると軟化したりひび割れが生じたりしやすく、また長期的に吸湿により硬度が低下するという欠点もある。また成分として塩化マグネシウムを使用するため、鋼の刃物を研ぐ場合に錆を発生させる場合があるので注意が必要。
(3)レジン系
結合剤として、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を用い200℃程度の温度で硬化させたもの。JIS R 6212:2006で規定されている。この製法をレジノイド法と呼ぶ。セメント系に比べさらに刃物への当たりが弱くなる。寸法精度を出しやすいことから工業用砥石で広く使われている他、仕上げ砥でも使われている。
一般的に、砥石の研磨力を示すものとして番手というものが使われており、この数字が小さいほど研磨力が高い。この番手は砥粒の粒度によって決まり、JIS R 6001で規定されている。基本的に砥粒の平均の粒径とその分布の仕方によって番手が決まる。一般的に番手で#700未満を荒砥、#700~#2000を中砥、それを超えるものを仕上げ砥と呼ぶことが多いが、この分類の仕方に厳密な定義はなく、人によって違う場合が多い。また同じ番手であっても研いだ時の研磨性や研ぎ味は決して同じではなく、上記の砥粒や結合剤の違いで、大きく受ける感じが異なる場合がある。更には砥粒の種類によっては、元の粒径が破砕されて小さくなる場合もある。また天然砥石については、均一の砥粒を含むということはまずあり得ないため、番手を決めることは不可能であり、荒砥-中砥-仕上げ砥というざっくりした分類しか出来ない。
4.結合度
砥石の硬さを結合度という指標で表し、JIS R 6242:2006の6.6.3で規定されている。Aに近いほど軟らくなり、Zに近いほど硬くなる。一般的には研ぐものが硬い場合は軟らかい砥石を、軟らかい場合は硬い砥石を用いるのが良いと言われている。