塩化ビニルモノマーを重合させただけの樹脂は硬くて脆く、結晶質であり、紫外線によりポリマー分子を構成する塩素原子が脱離し劣化黄変しやすい。そのため、柔らかくする可塑剤と劣化を防ぐ安定剤が加えられる。熱により軟化するため、熱可塑性樹脂に分類される。添加する可塑剤の量によって硬質にも軟質にもなり、優れた耐水性・耐酸性・耐アルカリ性・耐溶剤性を持つ。但し一部の溶剤には溶解し、その性質を利用した塩化ビニル樹脂溶剤系接着剤等による接着性は良好。熱可塑性樹脂なので溶接も可能だが、特に硬質塩ビの場合、分子内から離脱した塩素による変質・劣化には注意を要する。また難燃性であり、電気絶縁性である。このような優れた物性を持ちながら、ソーダ工業における食塩水電気分解で副産する低価格の塩素ガスが重量の半分以上を占める主原料のため非常に値段が安い。そのため用途は多岐にわたり、衣類、壁紙、バッグ、椅子やソファの張地(ビニールレザー)、インテリア(クッション材、断熱材、防音材、保護材として)、縄跳び用などのロープ、電線被覆(絶縁材)、防虫網(網戸など)、包装材料、水道パイプ、建築材料、農業用資材(農ビ)、レコード盤、消しゴムなど多数あり、かつては玩具にもよく用いられた。最近では軽量化を図る目的で一部の自動車用のアンダーコート材としても用いられている。更に塩素の割合を増やした「塩素化ポリ塩化ビニル」は、素のポリ塩化ビニルより高温構造強度があり、温水配管用などに使われる耐熱性硬質ポリ塩化ビニル管として、JIS K 6776などに規格化されている。