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防犯カメラ

監視カメラ(かんしカメラ)とは、何らかの目的で何らかの対象を監視するためのビデオカメラで、機械警備の構成要素である。主に人間を監視し、犯罪の抑止などの効果を求めて設置されるものは防犯カメラ(ぼうはんカメラ)、活火山や天候、河川を監視して防災上効果を求めるものは防災カメラ(ぼうさいカメラ)とも呼称される。防犯用語としては、監視カメラは目立たない場所に設置するカメラ,防犯カメラは目立つ場所に設置するカメラと区別することがある。広義にはカメラ単体ではなく、撮影した映像の伝送・処理、記録、表示機能を含むシステム全体を指すことがある。英語では video serveillance などと呼ばれることもあるが、 closed-circuit television(閉回路テレビ:ケーブルで結ばれたカメラとモニタ間だけの閉じた回路のテレビ)の略語を用いて「CCTV」と呼ぶことの方が多い。監視カメラの設置場所は、店舗などの各種施設内や敷地内、街頭、鉄道の駅や踏切、空港、学校、暴力団事務所、個人および集合住宅など多岐にわたる。従来は撮影した映像をアナログ信号で伝送するだけのアナログカメラが多かったが、LANの普及もあり、映像遅延を極限まで最小化するべき用途を除いては高画質で高度な機能も利用可能なネットワークカメラに移行されつつある。ネットワークカメラの中には高度な自動化のため人工知能を組み込んだ監視カメラもある。21世紀の遠隔操作の進歩により、カメラを搭載した警備ロボットにより監視を行う方法も実用化されている。費用対効果の高さにより、天網を構築して強固な監視社会となった中国の監視カメラが世界最大のシェアを獲得したが、バックドアの懸念が生じている。ハイクビジョンやダーファ・テクノロジーは世界シェアの大部分を獲得しており、他にも中小の監視カメラメーカーが大手ブランドと比較して安価な製品を供給している。

主な用途

防災

ダム水量監視、道路災害(崩落など)監視、活火山監視、津波監視、鉄道駅ホームの乗降状況確認など。工場の製造ライン監視、原子力発電所、火力発電所、研究所などで人が入れない場所の異常監視、ダム、河川、火山などの状況の監視・記録に使用されている。「かぐや」などをはじめ、人工衛星のような状態が把握しにくいものについても監視カメラが用いられる。

防犯

監視カメラは、様々な犯罪の摘発に役立っている。複数の監視カメラ映像をつなぎ合わせて犯人の行方を突き止める「リレー方式」、人工知能(AI)による顔認識システムも導入されている。日本の各都道府県警は、繁華街などの防犯対策の一環として、繁華街、街頭、街路周辺に監視カメラを設置している。鉄道会社においても、各駅の状況確認のため監視カメラを設置している。また、鉄道の車内にも設置されつつある。しかし、首都圏の各鉄道会社は監視カメラの運用規則を公表しておらず、規則を開示すべきとする声もある。一般の目に触れるものとしては、防犯を主な目的として、商店(小売店)や銀行など金融機関、暴力団事務所、エレベーター、公的機関の天井など様々な場所に設置されているものがある。目的は、金融・公的機関の場合、侵入者や不審者の監視・記録はもちろん、従業員の背任行為を抑止するためでもある。エレベーターでは乗客の異常行動などを感知して近くの階に止まるなど、色々な用途で使われている。商店の場合、顔認識による万引き常習犯の監視も行われている。ベトナムでは、空港の貨物運搬係による窃盗が多発しているため、運搬係に監視カメラを装着することが検討されている。暴力団事務所の場合、悪戯や対立する組の関係者、警察関係者の監視のため設置されている。施設内だけでなく、市街や盛り場の道路などに監視カメラが取り付けられることも増加しつつある。学校の通学路や校門への監視カメラ設置も行われているほか、校内への監視カメラ設置も進んでいる。また、カメラの価格低下に伴い、個人で自宅駐車場などに盗難防止、当て逃げ防止目的として安価な監視カメラを設置するケースもある。(「#設置場所と目的・効果」も参照)監視カメラの映像から必要な情報だけを簡単に検索し抽出できるシステムも開発されている。警察が、複数の監視カメラ映像や、個人から提供されたスマートフォンで撮影した映像を分析して、刑事事件容疑者の逃亡先を「リレー方式」で追跡して逮捕につなげる取り組みも行われている。日本では、防犯カメラなどで取得した画像によって容疑者を特定する割合が増加し、2019年(平成31年/令和元年)には検挙数の1割がカメラ画像によるものだった。物証の残りにくい特殊詐欺などの捜査では、防犯カメラの映像が重要となっている。しかし一方で、テレビニュースなどで防犯カメラの映像を紹介する際には、犯人の顔の部分や、自動車のナンバープレートなどにモザイク処理が行われることが多く、犯人の検挙に役立っていないとの批判がある。

設置場所と目的・効果

防犯用に設置される監視カメラの場合、「監視している」ことによる犯罪抑止効果を求めるケースと、「犯罪が起きたときの証拠確保」を目的とする場合とに分かれる。前者の場合は目立つ場所に設置され、後者の場合には目立たない場所に設置される。プライバシー侵害につながるという批判を回避するために監視カメラを設置していることを「監視カメラ作動中」といった看板などで告知している場合もある。この場合はもっぱら前者の目的を求めることになる。犯罪抑止用では、撮影機能がないダミーカメラも販売されている。カメラが破壊されることも考えられるので、複数のカメラを組み合わせて設置することがある。監視カメラ本体が他の監視カメラによって撮影されるようにするものである。また、カモフラージュの方法として、電球のソケットに挿し込める監視カメラ内蔵LED電球も存在する。また、ATMや自動販売機などの機械には監視カメラ搭載のものが多い。人物に設置されたウェアラブル監視カメラは、ボディカメラや身体装着監視カメラ (Body-worn CCTV)などと呼び、アメリカとイギリスや香港などの警察で急速に普及している。学校での使用も試みられ始め、アメリカではボディカメラの最大手アクソンとドローンの最大手DJIが提携して警察向けに監視ドローンを販売している。日本でも民間防犯用に監視カメラをドローンに搭載することも行われはじめている。また、中国の警察では監視カメラの機能を搭載したロボットが配備されており、監視カメラの機能を搭載したサングラス型のウェアラブルコンピュータも使用している。懐中電灯に監視カメラの機能を搭載することも行われている。

犯罪抑止

イギリスで2005年7月7日に起きたバス・地下鉄を標的としたロンドン同時爆破事件において、犯人の検挙が迅速に行われたのは、監視カメラの記録に負うところが大きい。特に故意犯に対する抑止効果が期待されている。日本においても、成田国際空港と関西国際空港に顔認識システム付きの監視カメラが設置されており、また2007年(平成19年)7月1日に東海道・山陽新幹線で営業運転を開始したN700系電車の全乗降口と運転室出入口にも、日本では初めて鉄道車両内に監視カメラを設置するなど、公共交通機関でも防犯を強く意識した監視カメラの設置が進んでいる。2012年に、刈谷市は防犯カメラを積極的に導入し、犯罪件数が5年で半減した。

機能

映像からの情報抽出

当初は、単なる画像の撮影と保管のみを行うものだったが、近年では続々と画像処理システムを組み合わせたものが登場している。たとえば道路に設置して、通過する車輌のナンバープレート画像を検出してデータとして抽出する自動車ナンバー自動読取装置(日本では警察の使う「Nシステム」が有名だが、商用もある)、車の画像や映像から車種を特定する車名認識(日本では警察の使う「Fシステム」が有名だが、商用もある)、空港などで旅行者の顔を撮影し犯罪者の顔写真データベースと自動照合をする顔認識システムなどが2016年(平成28年)時点で、既に導入されている。顔認識から性別や年齢を推定して、マーケティングに使用することも既に行われている。さらに行動様式を解析し、異常行動を検出するというソフトウェアも既に開発されているほか、人の震え(振戦など)から心理状態を解析するシステムも開発されている。また、個体識別のために歩行特徴を利用する歩容解析も行われており、犯罪捜査に活用されている。また、個人の解析だけでなく、群集の解析も行われており、群衆密度の変化から異変を検知したり、混雑度を予測することも行われている。滞在時間をヒートマップで表示することも行われている。複数の監視カメラに跨って人物を追跡する技術も開発されている。また、詐欺防止のためのATMにおける携帯電話使用検知や、武器検知システムも登場し始めている。煙検知システムも開発されている。2016年(平成28年)6月時点、顔認識による大規模な監視は難しい。米国では約1.2億人の顔認識データベースが整備されているものの、最上の特定率を誇るGoogleのFaceNetでさえ、大勢の顔の区別には不確実性が伴う (なお、FaceNetのオープンソース実装として、OpenFaceがある)。しかし、世界最大級の人口を抱えている中国では顔認識による大規模な監視が積極的に用いられており、Googleの特定率を上回るともされる約13億人の顔認識データベースが整備されている。日本の東京都では、特定率を上げるために、2016年(平成28年)4月以降の犯罪者の照合用顔写真の撮影を3Dで行っている。

音声などの付随情報の録音

集音マイクを持ち音声の録音が可能な監視カメラが増えている。また、監視カメラにマイクがない場合でも、別に集音マイクを設置することもできる。叫び声やガラスが割れる音、機械の壊れる音などの不審な音声を感知して自動的に通知・通報することが行えるものもある。音は賑わいの計測にも使われている。また、温度、湿度、匂いの記録も行われている。

携帯電話情報の収集

携帯電話の固有的な情報(MACアドレス)をBluetoothやWi-Fi経由で収集し、記録する装置 (Fake Access Point) を設置することもできる。iPhoneではiOS 8よりMACアドレスのランダマイズを行っており、固有値をバラ撒かないようになっているものの、デバイスの匿名化が充分ではないため、シーケンスナンバーやタイミング情報を使うことで未だ追跡が可能とされる。

深度情報の収集および利用

距離画像 (深度情報)は、実寸法の計測や、映像解析の補助に使うことができ、駐車場やATMの監視カメラなどで使われている。また、虫や動物などによる誤検知を防ぐ目的でも使われている。深度情報の取得には、同期された複数のカメラの映像などから画像処理などによって深度を推定する写真測量法や、近赤外光レーザーなどの照射と検出(LIDAR)により深度を算出する深度カメラ(TOF方式カメラ、位相差方式レーザースキャナーなど)が存在する。写真測量法では、ステレオカメラを搭載する監視カメラが出始めており、ステレオ映像の3D再構築によって高精度な映像解析が行われている。また、複数の監視カメラを用いて、複数の映像から深度を推定するシステムも存在する。LIDARでは、監視システムなどに向けて、TOF方式の深度カメラの供給が始まっている。LiDARは人物が重なって画像で判別しにくい時に有効だとされる。

温度計測・検知

サーモグラフィカメラによる温度計測を搭載した監視カメラシステムも存在し、(発熱を伴う)感染症罹患者を発見しやすくするための出入国管理や企業施設・イベントなど入場管理のほか山火事対策などに使われている。また物陰に隠れた人を見つけるために遠赤外線カメラを併載する監視カメラも開発中となっている。

ミリ波などによる刃物・銃・爆発物検知

ミリ波などによる刃物・銃・爆発物検知技術も存在し、今後監視カメラとの一体型のシステムが登場すると推測されている。

威嚇・妨害

センサーライトでの照射や、音声による警告が可能な監視カメラも存在する。声掛けを行う監視カメラも研究されている。また、駐車場管理に向けて、ゲートバーとの連携に対応する監視カメラシステムも存在し、それによりブラックリストに載った車を通さないようにすることが可能。

映像の合成

複数の監視カメラからの映像を合成して、一覧しやすい俯瞰視点で表示する技術が開発されている。

ライブカメラ

広域を監視し、テレビ局、インターネットなどで公開できる画像をリアルタイムに撮影している物はライブカメラとも呼ばれている。更に、インターネットのURLを公開せず、ログイン時のユーザー名とパスワードを企業や組織内、また個人や家族内に留めれば、インターネットを介して距離に関係なく遠方の監視も行える。