軸受の各部品には様々な設計上の制約がある。例えば、軌道輪は複雑な形状となっていることが多く、製造が難しい。転動体は、形状は単純だが小さい。転動体は軌道輪上で激しく変形するため、疲労が蓄積しやすい。軸受にかかる荷重はその回転速度にも影響される。転がり軸受は100,000rpm以上の速度で回転することもあり、その場合の荷重は単なる重量ではなく運動量の影響の方が大きい。転動体が小さければ、それ自体が軽いので運動量も小さいが、軌道輪と接したときの変形の度合いも激しいため、疲労による損傷が発生しやすい。転がり軸受の最大回転速度は 'DN' で示されることが多く、これは直径(mm)と最大回転数(rpm)の積である。アンギュラ玉軸受のDNは210万以上にもなるものがあり、高速回転と高精度を要求されるロケットなどの用途にも使われている。材料の選択も重要である。硬い素材は磨耗には強いが、疲労による損傷が発生しやすい傾向がある。そのため用途によって最適な材料を選択することが重要である。転がり軸受の材料としては鋼がよく使われるが、プラスチック、ガラス、セラミックスなどもよく使われている。材質の小欠陥(不規則性)は軸受の故障の大きな原因の1つである。19世紀後半の軸受の最大の改良は均質な材料を使うようになった点であり、新素材や潤滑よりも大きな改善となった。潤滑剤の特性は温度や荷重によって変化するため、用途によって最適な潤滑剤は異なる。軸受は使用していると磨耗していくが、設計者は軸受の大きさとコストを寿命と天秤にかけて設計する。軸受を低温で清潔に保ち、推奨荷重以内で使えば、顕微鏡レベルの素材の欠陥がなければ、極めて長寿命に動作し続ける。したがって、冷却と潤滑と密封が軸受の設計の重要な部分を占めている。必要とされる寿命も用途によって異なる。例えば、Tedric A. Harris は Rolling Bearing Analysis の中で、スペースシャトルの酸素ポンプについて、ポンプが汲み上げる液体酸素と軸受の潤滑油を適正に分離できず、酸素と化学反応して発火するなどの故障が頻繁に起きたと記している。これを解決するため、軸受の潤滑剤として酸素を使ったという。液体酸素は潤滑剤としては性能が悪いが、そのポンプが動作するのは数時間だけなので、それでも十分だった。動作環境や保守しやすさも設計上の重要な点である。軸受には、定期的に潤滑剤を加える必要があるものもあるが、工場でシールで密封して寿命が尽きるまで保守不要な軸受もある。潤滑剤に不純物があると磨耗が起き、軸受部品の寿命を短縮することになる。また、潤滑剤に水が混じっていると故障の原因になることが多い。
関連項目
玉軸受軸受すべり軸受
脚注・出典
参考文献
Johannes Brändlein, Paul Eschmann, Ludwig Hasbargen, Karl Weigand (1999, 3rd edition). Ball and Roller Bearings: Theory, Design and Application. Wiley. ISBN 0-471-98452-3
外部リンク
転がり軸受の潤滑について(英語)(PDF) SchaefflerNASA technical handbook Rolling-Element Bearing (NASA-RP-1105)NASA technical handbook Lubrication of Machine Elements (NASA-RP-1126)How rolling-element bearings workKinematic Models for Design Digital Library (KMODDL) - コーネル大学の機械についての動画や画像のサイト。 機械工学関連の古典的書籍の e-book library もある。