フォークリフト(Forklift)とは、油圧を利用して昇降および傾斜が可能な荷役用のつめ(フォーク)を車体前面に備えた荷役自動車。国際標準化機構では、英語: forklift truck と呼称している。日本産業規格の JIS D 6201:2017は、「フォークなどを上下させるマストを備えた自走式荷役運搬車両全般の呼称。」と規定している。ハンドリフトなど他の産業用車両と区分するため「 1.フォークなどの貨物を保持する装置が装備されている。2. マストを保有する。3. 動力を持って走行、フォークなどの昇降をおこなう。」の3つの構造を満たすものをフォークリフトと定義されている。
歴史
1920年代にアメリカ合衆国のエールやクラークなどの複数の企業によって開発される。日本では1939年(昭和14年)に日本輸送機製作所(ニチユ。現:三菱ロジスネクスト)が「腕昇降傾斜型運搬車」として開発した。戦時の燃料統制でガソリンが入手しにくかった情勢だったため鉛蓄電池で動作するものだった。しかし、普及はしなかった。第二次世界大戦後に進駐軍が武器や砲弾等を運ぶために持ち込んだことにより注目を集め、それ以後は日本国内の様々なメーカーによって開発されて普及し、現在に至る。
フォークリフトの種類
JISが規定しているフォークリフトの種類
JIS D 6201は、次の種類で分類している。外観形状による分類カウンターバランスフォークリフトストラドルフォークリフトパレットスタッキングトラックサイドフォークリフトリーチフォークリフトウォーキーフォークリフトラテラルスタッキングトラック三方向スタッキングトラックオーダーピッキングトラックラフテレーンフォークリフトマルチディレクションフォークリフトプラットフォームスタッキングフォークリフト動力による分類内燃機関(エンジン)式フォークリフトガソリンエンジン車LPG車LPG・ガソリン併用車ディーゼルエンジン車電動式フォークリフト外部電源式バッテリ車エンジン・電気併用車車輪タイプによる分類ニューマチック車クッション車操縦方式による分類乗車式座席式前向座席式横向座席式立席式前向立席式横向立席式歩行式無人式
日本産業車両協会の統計上のフォークリフトの種類
一般社団法人 日本産業車両協会は、次の区分で統計を発表している。エンジン式ガソリンエンジンディーゼルエンジンバッテリー式
ITAのフォークリフトの区分
Industrial Truck Associationは、フォークリフトを次の種類に分類している。世界のフォークリフトの統計は全て下記の分類でおこなわれている。Class 1 Electric Motor Rider Truck - Counter balanceedClass 2 Electric Motor Narrow isle TrucksClass 3 Electric Pedestrian TrucksClass 4 & 5 Interal Combustion Truck, Cushin and Pneumatic Tires
車両の特徴
車体前方にフォーク(つめ)を具備しており、その「つめ」を荷物の下部やパレットに差し込んで、持ち上げて運搬する。フォークを上昇させると共にマスト(支柱)も伸びて上昇し、車体高さよりも高い場所の荷物も扱うことができる。日本国内では2段伸縮マストで最大揚程3メートルのものが標準であるが、小 - 中型では3 - 4段伸縮で最大揚程8メートルのものも使われている。ISOコンテナ用の30 - 45トンの機種では2段伸縮で最大揚程12 - 15メートルのものもある。逆に少数特殊であるが、車体高さよりも低く短いマスト(ショートマスト)や伸縮しないマスト(モノマスト)を取り付けたものや、車体高さ以下ならフォークを上昇させてもマスト高さが上昇しないもの(フリーリフトタイプ)もあり、トンネル工事、天井の低い屋内や食品庫内、貨物用エレベーターやコンテナ内へ進入して荷役する作業、床置荷役しか行わない場所などで用いられている。カウンターバランス式フォークリフトではマストを前後に傾ける(チルト)機能を有しており、リーチリフトではフォークのみを前後に傾ける機能を有していて、荷重に因るフォークの撓みや車体の前傾を生じても荷物を水平に保ったり、荷物をマスト寄りに抱き込んで走行時に荷物が滑り落ちることを防止するために用いられている。タイヤはチューブ付の空気入りタイヤを用いるのが一般的であるが、およそ3トン以下の小型機種では内部に軟質ゴムを充填したノーパンクタイヤも多用されている。リーチリフトでは鉄輪表面にゴムまたは、ウレタン樹脂を貼り付けたソリッドタイヤを用いたものが大多数である。タイヤの色は一般的な自動車用と同様に黒が多いが、床面の汚染を嫌う屋内用途ではタイヤ跡が付かないよう白または緑などのカラータイヤも用いられている。一般的に後輪操舵であるため、ハンドルの旋回方向と車両の挙動(内輪差、外輪差)が普通の自動車とは逆になり、運転には慣れが必要。自動車では見られないミッドシップエンジン、フロント(MF)駆動であるのも特徴。リーチリフトの一部機種では荷重側車輪の向きを任意の角度へ変えられるものもあり、斜行や真横への走行も可能。木材や鋼材などの長尺物を持って狭い通路へ横行進入するなど、サイドフォークリフトと同じ機能を有している。ホイールベースが短く、最大舵角が大きいので小回りが利く。短距離の荷役運搬を主な目的としているため、最高速度は低く、リーチリフトで11 km/h程度、カウンターバランス式では小型なフォークリフトで 20 km/h 程度以下、最大荷重が10 tを超えるような大型のフォークリフトでも 35 km/h 程度以下の機種が多い。(小型特殊自動車の公道での法定速度は 15 km/h 以下と 35 km/h 未満)。ブレーキ時の慣性によって荷物が前方へ転落する(あるいは車両ごと転倒する)事故を防ぐため、荷役積載時は前進走行よりも後退走行のほうが安全である。荷物が小さく視界が確保できる場合は前進走行でもよいが、事業所によっては「前進禁止」の規則を定めていることもある。パレット用フォーク以外にも様々なアタッチメント(荷役装置)が製造販売されており、それらを装着することで様々な荷物や作業に対応できる。クローラ式フォークリフトでは、不整地での
パレチゼーションを可能にする。小型のものが多く、最大荷重は2000kg前後が多い。クローラの足回りは超信地旋回が可能なため、小回りが最も利く。太陽光発電所の建設や、農業でのパレット運搬に用いられるほか、屋外展示場のブース設営などにも使用される。不整地での荷役作業が可能なため、南極・昭和基地などにも配備されている。
カウンターバランス式フォークリフト
後部にカウンターウエイトを備える一般的な形状のフォークリフト。エンジンまたはバッテリーは車体中央部か運転士座席の下に搭載したものが一般的である。積載量は0.5 t - 40 tクラスまで存在する。トランスミッションはマニュアル式またはトルコン式が選択可能。世界第2位の生産台数を誇るLinde MHはハイドロ・スタティク・トランスミッション (HST) を採用しているものもある。基本的に4輪(タイヤ4本)であるが、小型の機種では後輪を1個とした3輪タイプもある。横幅が広い荷物を扱う場合、荷物を高く持ち上げる場合など、左右安定度で許容荷重が制限される用途では前輪をダブルタイヤとして左右安定度を確保し、許容荷重を増加させている。また、特に横幅が広く、高積みが行われるISO(海上)コンテナを扱う車両には前輪トリプルタイヤのものもある。カウンターバランス式の長所は、リーチ式より転倒安定度と車体強度が高いうえに走行速度やフォークの上昇速度が速く、安全性と作業効率が高いことが上げられる。また、リーチ式よりも高揚程かつ大荷重のものを製造可能である。反面、リーチ形のフォークリフトに比べて車体寸法が大きいので回転半径が大きく狭所作業性が劣る面がある。
リーチリフト
マストが前後に移動(リーチイン・リーチアウト)できることを大きな特徴とする、フォークリフトの種類の1つである。最小回転半径が小さく、倉庫内など狭隘な作業場所において広く用いられている。国内では、最大積載荷重が0.5 t - 3 tクラスが販売されている。カウンターバランス式と違い、基本的には立ち乗りであるが、なかには座って操作する製品も存在する(海外では座って運転するモデルが主流で座乗式ともいわれる)。リーチ式の長所としては、先述のようにカウンターウエイト式より小回りが利く、動力方式がバッテリー式の為、騒音が小さく空気汚染が少ない点が挙げられるが、短所としては、カウンターバランス式よりも転倒安定度が低く、マスト剛性も低いので荷物を高く持ち上げた場合の揺動が大きく定置効率が悪く転倒しやすい。駆動輪が1輪かつ径が小さいので駆動力が小さく路面が濡れていたり凹凸が有ると走行性能が著しく低下する。水平かつ平滑に仕上げられた床面以外での走行は困難。構造上、傾斜地や雨中での使用は危険で屋外荷役には適さない。連続稼働時間が内燃機関式より短い。大きさやレイアウトの都合上、内燃機関式への対応が難しい。バッテリーには定期的な補水が必要、初期導入コストが高価であるなど。充電に要する電気料金は同能力のエンジン式フォークリフトの燃料費より安く済む場合が多いが、劣化したバッテリーの取替費用が高額になるので、運用状況によってはライフサイクルコストがエンジン式より高くなる。なお、「プラッター」と呼ばれることもあるが、これは日本で最初にリーチ式バッテリーフォークリフトを開発した三菱ロジスネクスト製品の商標である。リーチ式の変種としてオーダーピッカーがある。運転席が車体上ではなく、フォークと一体化した構造でフォークと共に昇降する構造になっていて、運転者が手作業で高所に在る荷物をパレットに積み込んだりフォーク上パレットに積載した荷物を高所で積み替えたりできるものである。