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プッシュスイッチ

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押しボタン(おしボタン、英: push-button)は、押すことでスイッチを開閉する部品。プッシュボタン押釦。単にボタンとも呼ばれる。

概要

「指先で押す」という操作によって機器への入力を行うパーツである。ボタンを押すと、ストロークする(ボタンが奥へ移動する)。「カチッ」という音が鳴るボタンもある。電子機器や産業機器においては、スイッチング回路と組み合わせて「押しボタンスイッチ」の意味で使われることが多いが、本来的にはボタンの仕様とスイッチング回路の仕様は別々の概念である。

規格

産業機器における「押しボタンスイッチ」は、日本においては一般社団法人日本電気制御機器工業会が策定するNECA規格において、「NECA C 4520(制御用スイッチ通則)」および「NECA C 4521(制御用ボタンスイッチ)」において定義されている。かつてはJIS規格(JIS C 4520-1991およびJIS C 4521-1991)において定義されていたが、これは1999年に廃止され、NECA規格に引き継がれた。また、家電製品における「押しボタンスイッチ」に関しては、TRON仕様の中の「TRONヒューマンインターフェイス仕様」が定義している。TRON仕様においては、操作方法の分類において「指先で押すことによって操作する」ことを示す「押しボタン」(プッシュ型パーツ)という概念と、設定内容の分類において「ON/OFFなど二者択一でどちらかを選ぶ」ことを示す「スイッチ」という概念は、別々に定義されているが、「プッシュ型パーツ」のもっとも典型的な例として「押しボタンスイッチ」が例示されている。TRON仕様においては、「スイッチ」は「二者択一でどちらかを選ぶもの」と定義されているため、例えばボタンの押し方の強さによって数値や量(ボリューム)を指定して機器に渡すような装置は「プッシュ型ボリューム」ということになり、「スイッチ」には含まれない。

種類

スイッチング回路の仕様において分類すると、大きく分けて、押すとオンになる(回路が閉じる)タイプのスイッチと、押すとオフになる(回路が開く)タイプのスイッチが存在する。より複雑な動作(押し初めだけオンになるなど)をするかのようなボタンもあるが、そういうものもほとんどはこの2種類のいずれかと電気回路との組み合わせで実現されている。ボタンを押したときの位置が保持される期間において分類すると、大きく分けて、自動復帰型(モーメンタリスイッチ)と位置保持型(オルタネートスイッチ)が存在する。モーメンタリスイッチとは、押している間だけ一時的にスイッチが「オン」または「オフ」になり、ボタンを離すと自動ですぐに元に戻るスイッチである。NECA規格およびTRON仕様では共に「モーメンタリ」型と呼称する。オルタネートスイッチとは、一度ボタンを押すとその後もずっと「オン」または「オフ」の位置が保持されるスイッチであり、押すたびにオンとオフが反転する。NECA規格では「オルタネート」、TRON仕様においては「セットアップ」型と呼称する。オルタネート動作を実現する構造はいろいろあり、代表的なものとしてはハートカム方式、回転カム方式、ラチェットカム方式がある。電気的なスイッチでなく、流体の流路の開閉など機械的なスイッチングをするボタンもある。アコーディオンの弁を開閉するボタン、トイレの水を流すボタンなどがその例である。キーボードのキーも「押しボタンスイッチ」の定義に当てはまる。平らで隙間なく並んだものを特にキーと呼ぶことが多いが、ボタンと呼ぶかキーと呼ぶかの境目はあいまいである。SUI(ソリッド・ユーザー・インターフェイス、物理的なスイッチ)とGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェース、画面上のスイッチ)において同様のインターフェイスを規定しているTRON仕様においては、SUIの位置保持型スイッチのことを「セットアップ」型と呼称する一方で、GUIの位置保持型スイッチのことを「オルタネート型」と呼称している。なお、NECA規格においては「引きボタンスイッチ」(指でボタンを引っ張るタイプのスイッチ。手を離すとばねの力などで自然に元の位置に戻る)や「押し引きボタンスイッチ」(押した後に自然に元の位置に戻らず、押した人が引っ張って元の位置に戻すタイプのスイッチ)なども押しボタンスイッチの一種に含まれている。

紛らわしい例

ある程度の面積がある一つのパーツにおいて、押す場所によって別々のスイッチング回路を開閉するような装置を「押しボタンスイッチ」と呼ぶこともある。プラスとマイナスが一続きになった「セレクタ」や、ゲームパッドの十字キーがその例である。ただし、このようなパーツが「押しボタンスイッチ」であるというようなことはNECA規格にもTRON仕様にも定義されていないため、「押しボタンスイッチ」と呼ぶのは誤りである。TRON仕様においては、複数の選択肢の中から1つ(あるいは複数)を選ぶようなパーツは「スイッチ」ではなく「セレクタ」に分類される。なお、十字キーは長らく任天堂の特許であり他のメーカーは実装できなかったため、1つの十字キーと同じ機能を4つの押しボタンスイッチ(十字ボタン)で実装しているコントローラーも存在する。メンブレンスイッチは、押すスイッチではあるけれどもボタンではないので、押しボタンスイッチに分類されない。なお、TRON仕様においてはメンブレンスイッチは「プッシュ型」にすら分類されず、押したら凹むパーツだけが「プッシュ型」に分類され、押しても凹まないパーツは「タッチ型」に分類されるので、言うなればメンブレンスイッチは「タッチパネル」である。ボタンに類似する形をしていても、機械的に動作する機構がなく、圧力や静電気などを感知することでスイッチのオン・オフを行う装置もあるが、これは押しボタンスイッチではなく、タッチパネルである。なお、iPhoneの「ホームボタン」については、iPhone 6S以前のiPhoneは本物の押しボタンスイッチを搭載していたが、iPhone 7以降のiPhoneは物理ボタンが廃止されて感圧式タッチパネルとなっているので、同じ名前と同じ形をしていても、「押しボタンスイッチ」どころか「ボタン」ですらない。