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開発した小形エアブースタABP2のコア技術を紹介します
CKD技報は、永年当社が蓄積してきた自動化を革新するための課題、問題解決への
技術・研究開発の成果を技術情報としてご紹介いたします。
このカタログについて
ドキュメント名 | CKD技報「高信頼性エアブースタの長寿命化技術」 |
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ドキュメント種別 | ホワイトペーパー |
ファイルサイズ | 1.3Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | CKD株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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高信頼性エアブースタの長寿命化技術
Technology for Extending the Service Life of High-Reliability Air
Boosters
吉田 正成 Masashige Yoshida
2050年カーボンニュートラル達成を目指し、省エネへの取り組みが世界的に加速している。製造工場に目を向け
ると、例えばコンプレッサの電力が使用電力に占める割合は非常に大きく、コンプレッサの吐出圧力を0.1MPa下げ
れば、使用電力を5%~10%削減することができると言われ、多くの工場での省エネ改善項目となっている*1)。低圧
化に際し、エア機器の能力が不足する場合、局所増圧機を接続することで圧力を補う場合があり、電源不要で駆動す
るエアブースタが採用されることが多い。しかし従来のエアブースタの場合、その特性上、メンテナンスや異常停止
のケアなど工数が発生する場合があり、小形で信頼性の高いエアブースタが求められていた。本稿ではこのような
要求に応えるために開発した小形エアブースタABP2のコア技術を紹介する。
Aiming to achieve carbon neutrality by 2050, efforts to save energy are accelerating worldwide. For example,
if we look at manufacturing plants, compressor power accounts for a very large proportion of the power used,
and since it is said that lowering the compressor discharge pressure by 0.1 MPa can reduce power
consumption by 5% to 10%, many plants have made this an energy saving improvement item( ECCJ, Energy
Conservation Guidebook for Factories). In lowering the pressure, if the capacity of the air equipment is
insufficient, a local pressure booster may be connected to supplement the pressure, and air boosters that do
not require a power source are often employed. However, conventional air boosters, due to their
characteristics, sometimes require man-hours for maintenance and taking care of abnormal stoppages, so
there was a need for a compact and highly reliable air booster. This paper introduces the core technology of
ABP2, a compact air booster developed to meet this need.
1 はじめに 本製品の作動原理を簡単に述べる。Fig .2の IN側から
流入したエアは、本体内部のIN側チェック弁を通り昇
本稿におけるエアブースタとは電源不要で圧縮空気 圧室A、Bに流入する。同時にレギュレータ部、切換バ
を駆動源にして、INポートからの一次圧力(以下、IN側 ルブ部を通って駆動室Aにも流入する。ピストンロッ
とする)を最大2倍に増圧し、OUTポート側(以下、 ドを介してつながった二つのシリンダピストン(以下、
OUT側とする)へ出力することができるエア機器を指 ピストンとする)において、昇圧室A、Bのピストンを
す。Fig.1のようにコンプレッサとエア機器の間に圧力 押す力は釣り合うが、駆動室Aがピストンを押す力で
によるエア機器の能力不足を補う目的で設置する。 左に動く。この時昇圧室Aは圧縮されて圧力が高くな
りOUT側へ供給される。ピストンがエンド端まで移動
すると切換スイッチが押され、流路が切り換わり、IN
側のエアが駆動室Bに供給されることで、ピストンが
反対方向へ移動し昇圧室Bが圧縮される。以上の動作
を昇圧室とOUT側の圧力が釣り合うまで繰り返し行
うことで、増圧エアを得ることができる。
Fig. 1 エアブースタ導入例
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高信頼性エアブースタの長寿命化技術
Fig.4右上はダイヤフラム式をベースとする従来品
のレギュレータ部の内部構造である。この方式は軸受
部にクリアランスを持たせ、ディスクシールにバルブ
ステムが倣うことでシール性を高めている。しかしエ
アブースタ特有の使用方法として、特にエアブースタ
にタンクを介さずにエア機器を直接つなぐ場合、OUT
側の圧力変動が大きいためステムの作動ストロークが
大きく、かつ高頻度で作動する。そのためディスクシー
ルに倣うために傾いたバルブステムが軸受部に片当た
りすることで偏摩耗が発生し早期破損の原因となる場
合がある。ABP2ではレギュレータピストン式を採用
し、クリアランスを抑えたメタル軸受けでバルブステ
ムを支持することで、バルブステムの傾きを抑制し、
摩耗を減らすことで長寿命化を達成した(Fig.4右下)。
Fig. 2 エアブースタの内部エア回路図
2 コア技術
2-1 長寿命化
エアブースタは主にシリンダ部と切換バルブ部、レ
ギュレータ部の3つのユニットで構成されている。
シリンダ部においてはパッキンの材質を従来のニト
リルゴムNBRから、特殊配合による自己潤滑性の高い
パッキンに変更し、更にその締め代を適切に管理する
ことで長寿命化を図った。またグリースも粘度を変更
し潤滑部に介在しやすいグリースを採用することでエ
アブースタ特有の高頻度下でもグリース切れを起こし
にくいよう設計した(Fig.3)。切換バルブ部には長寿命 Fig. 4 レギュレータ部の内部構造図
を特徴とする当社4Gシリーズのマスターバルブを採
用することで従来比2倍以上の長寿命を達成した。 2-2 異常停止レスによる信頼性の向上
エアブースタは電源不要で駆動するため、全ては圧
縮エアのバランスで成り立っている。特に切換バルブ
部は、Fig.5の大小いずれかのバルブピストンがスプー
ルを押すことで流路を切り換えるが、バルブピストン
の力が等しくなった場合にスプールがバルブ本体の中
央で停止する可能性がある。その場合はIN側のエアが
駆動室A、Bいずれにも流入することができず異常停
止となる(Fig.5上段)。ひとたび停止するとIN側、OUT
側の圧力を抜いて再度圧力を入れるなど、直接ケアを
するしか復帰させる手段がなく、製造ラインのストッ
プに直結する。
Fig. 3 長寿命のコア技術
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3-2 作動音の低減と充填速度
エアブースタは増圧エアをOUT側へ出力する速度
(充填速度)も重要な製品性能の一つであり、速いほど
よいためスピードコントローラなどでピストンの速度
を制限していない。そのために一連の増圧過程におい
て、ピストンや切換バルブピストンの衝突音、排気音
など様々な作動音が発生する。従来品では最大80dB
もの作動音が発生する場合があった。これは地下鉄や
航空機の機内の騒音に匹敵するため*2)、製造環境の悪
化を招く場合がある。そこで最も大きな作動音がバル
ブピストンの外壁への衝突音であることを突き止め、
Fig.7のようにバルブピストンが内壁のボディに衝突
する構造に変更することで、従来比12dBの作動音低
減を達成した(Fig.8)。
Fig. 5 切換バルブの異常停止と自己復帰
これを回避するために、Fig.2におけるエアブースタ
の内部エア回路上に非常に微細な孔を持つ固定オリ
フィスを配置した。これにより左右のバルブピストン
の力が同一となり、バルブ本体の中央でスプールが停
止した場合でも、時間と共にバルブピストン大側のエ Fig. 7 切換バルブの内部構造
アが固定オリフィスを通り大気に放出されることで圧
力が下がり、相対的にバルブピストン小の力が勝るこ
とでスプールが作動し自己復帰することができる
(Fig.5下段)。これにより異常停止レスで装置の安定稼
働に寄与する、信頼性の高い機器とすることができた。
3 検証結果
3-1 耐久試験結果
Fig.6に従来品と開発品の耐久試験結果の比較を示
す。従来品は1,200万回にて異常が起き製品寿命に達し Fig. 8 作動音低減
たのに対し、開発品は3倍以上の4,000万回稼働しても
問題を起こすことなく安定稼働できることがわかった。
4 おわりに
メンテナンスを減らし、高い生産性を実現すること
は、カーボンニュートラルを実現するための一手段で
あると考え、当社は本稿で紹介したエアブースタを含
む、長寿命などの特長により、止まらない「高い生産性
に貢献」するHPシリーズ( High Product iv i ty
Series)機器をラインアップしている。さらなる小形
化や長寿命化など、シリーズを進化させることで引き
続き産業の発展に貢献したいと考えている。
Fig. 6 耐久試験結果
*1)「工場の省エネルギーガイドブック」省エネルギーセンター
*2)「 生活騒音パンフレット」環境省
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高信頼性エアブースタの長寿命化技術
執筆者プロフィール
吉田 正成 Masashige Yoshida
機器事業本部
Components Business Division
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