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近年の労働力人口の減少に伴い、FA機器は長寿命かつメンテナンスが容易であることが求められている。 これら市場動向に合致する製品として、当社で開発した空気圧バルブTVGシリーズの設計手法について紹介
CKD技報は、永年当社が蓄積してきた自動化を革新するための課題、問題解決への技術・研究開発の成果を技術情報としてご紹介いたします。
このカタログについて
ドキュメント名 | CKD技報「防水形省電力アクチュエータの耐環境、省電力技術」 |
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ドキュメント種別 | 製品カタログ |
ファイルサイズ | 1.3Mb |
登録カテゴリ | |
取り扱い企業 | CKD株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧) |
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このカタログの内容
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防水形省電力アクチュエータの耐環境、省電力技術
Environmental-Resistance and Power-Saving Technologies in
Waterproof Power-Saving Actuators
米田 充孝 Mitsutaka Yoneda
近年の労働力人口の減少に伴い、FA機器は、長寿命、かつメンテナンスが容易であることが求められてきている。
また、様々な使用環境で使用できるよう耐環境性能と、エネルギーコストを低減するための省電力化も重要である。
これら市場動向に合致する製品として、当社で開発した空気圧バルブ「TVGシリーズ」の設計手法について紹介する。
As a consequence of the recent decline in the labor force, the need for FA equipment to have a long
service life and be easy to maintain is increasing. It is also important for it to have environmental
resistance so that it can be used in a variety of environments and to save power to reduce energy
costs. This paper presents the design technique applied to the TVG Series pneumatic valve CKD has
developed as a product that meets these market trends.
1 はじめに ソレノイド部(アクチュエータ)
空気圧バルブの使用環境は、食品加工、医療、化学プ
ラントなどの業界において、機器が水や湿気にさらさ
れたり、頻繁に洗浄されたりすることがある。また、保
管及び輸送時に高温多湿の環境になる場合もある。
IP67規格を有した空気圧バルブは、塵や一時的な水没
に対する耐性を持ち、厳しい環境条件においても性能
を発揮し、機器の信頼性と寿命が向上する。このよう Fig. 1 従来品パイロット式空気圧バルブ
に、防水性能を有したバルブは、設置とメンテナンス
性で、様々な産業における耐環境性の要求に対応した
空気圧バルブである。
2 IP67 規格への対応
IPコードは、電子機器などの防塵と防水に関する程
度を示す等級文字で、IP67規格は、防塵かつ、一定の Fig. 2 従来品アクチュエータの内部構造
水圧で一定時間(30分間)水中に浸けても有害な影響
がないことを示している。 2-1 樹脂モールド構造
Fig.1のようなパイロット式空気圧バルブのIP67規 モールドする樹脂材は、適切に選定しないと、Fig.3
格対応の開発において、ソレノイド部の耐水性への対 のように成形圧で巻線部に樹脂が流入してしまい、断
応が最大の課題である。従来は、Fig.2に示すように、 線に至る場合がある。従来は、巻線と磁気フレーム内
磁路面積を最大にするため、磁気フレームを外部に露 に他材料を注入して保護する方法や、熱硬化性樹脂の
出させている。しかし、長時間水分にさらされること エポキシ成形の実績があるが、硬化するまでに時間が
で腐食が発生するため、コイルを樹脂でモールドする 掛かり、成形サイクルが長くなるため、生産性に課題
よう、構造を見直す必要がある。 がある。今回、Fig.4に示すように新規樹脂材による
モールド成形の開発に取り組んだ。
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防水形省電力アクチュエータの耐環境、省電力技術
2-3 金型構造の検討
成形時に磁気フレームに負荷が掛かり、溶接破断等
の不具合を起こさないよう、Fig.7に示すように、溶接
部に負荷が掛からない金型構造とした。
Fig. 3 樹脂の流入 (X 線画像)
Fig. 7 金型構造見直し
成形条件の最適化、金型構造の見直しを実施するこ
とで、成形時の断線がなくなり(Fig.8)、IP67規格対
応のモールド成形技術が確立できた(Fig.9)。しかし、
巻線は、磁気フレームの外側にモールド樹脂を有する
ため、ソレノイドは現行品に対し、より小型化、省電力
化に対応する必要があった。次項にその設計手法を述
Fig. 4 開発品アクチュエータの内部構造図
べる。
2-2 材料選定と成形条件
コイルの発熱に耐えるため、線材は耐熱性の良い銅
線を選定した。また、コイル部は、巻線に成形圧が均一
に掛かるよう均肉設計とした。設計段階から、流動解
析を実施(Fig.5)して、巻線に負荷が掛からない、最適
なゲート位置、成形条件を模索した(Fig.6)。
Fig. 8 対策品 (X 線画像)
Fig. 5 流動解析結果
Fig. 9 製品外観
3 小型化、省電力化への取り組み
3-1 アクチュエータ開発の課題
ソレノイドバルブの小型化、省電力化は、可動鉄心
Fig. 6 ショートモールド試作 の駆動に必要な吸引力を低い電流で発生することで実
現できるが、与えられた制約や目標とする仕様のもと
で磁気回路の性能を限界まで引き出す、最適化が必要
となる。しかし、従来の設計は、電磁現象に精通した技
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術者が経験則に基づき、カット&トライで設計してい
たため、効率や質に課題があった。
具体的には、Fig.10に示す方法で、Fig.11のような
CAEの解析モデルを作成し、条件の設定、解析、結果
の検証からフィードバックし、再びモデルの作成とい
う流れを繰り返し、時間をかければ最適解にたどり着
ける場合もあるが、膨大な工数や技術者の力量に依存
していた。
Fig. 13 アクチュエータ断面図
Fig. 10 従来の解析の流れ
Fig. 14 磁路面積と起磁力
Fig. 11 解析モデル
3-3 起磁力の最適化
3-2 遺伝的アルゴリズム法を導入した磁場解析 次に、巻線の条件によって変化する起磁力と、磁路
遺伝的アルゴリズムとは、生物が環境に適応しなが 面積について最適化している。ソレノイドバルブの外
ら進化していく過程を工学的に模倣した最適化手法で 形寸法を維持したまま巻数を変化させるために、固定
ある。Fig.12に示すように設定した条件の中からサン 鉄心と可動鉄心、磁気フレームの寸法と巻線容積をリ
プルがランダム抽出され、親個体の優秀な傾向を引き ンクさせる必要がある。
継いだ子が生成される。そして設定した目標値に近づ Fig.15に示す通り磁路面積を小さくすると、起磁力
くような個体で満たされる。一定の間隔でまたランダ は小さくなるが、巻線容積が大きくなることで巻数が
ム抽出されたサンプルと融合することで突然変異を引 増え、起磁力が大きくなる。磁路面積と巻数はトレー
き起こし、局所的な収束を回避しながら計算を行って ドオフの関係にあり、係数xを用いてパラメータがリ
いくアルゴリズムである。 ンクして変化するように設定し最適化解析を行った。
その結果、Fig.16に示す通りトレードオフの関係で
あっても最適解を得ることができた。
Fig. 12 遺伝的アルゴリズムの流れ
磁気回路を最適化するために、Fig.13に示すように
磁気フレームや可動鉄心、固定鉄心等の磁路面積につ Fig. 15 アクチュエータ断面図
いてパラメータを設定し、遺伝的アルゴリズムを用い
たシミュレーションを実施した。
この結果、Fig.14に示すように、磁路面積について
ある寸法におけるパラメータの変化が、起磁力に寄与
していることがわかった。
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防水形省電力アクチュエータの耐環境、省電力技術
Fig. 16 磁路面積と起磁力
最終的に、Fig.17に示すように遺伝的アルゴリズム
を用いた最適解は、現行品と比較して起磁力が82.4%
向上し、目標とする起磁力を満足することができた。
Fig. 17 吸引力特性
4 おわりに
今回、耐環境性と省電力性能を有した空気圧バルブ
の設計手法を紹介した。本稿で紹介した技術は、当社
のプラグイン方式バルブ「TVGシリーズ」のアクチュ
エータとして採用しており、使用環境を問わないオー
ルインワン製品として、産業の様々な分野で利用され
ていくであろうと考える。今後も、当社のコア技術で
あるコイル技術を活用し、環境負荷低減型商品の提案
を継続し持続可能な社会に貢献していく。
執筆者プロフィール
米田 充孝 Mitsutaka Yoneda
機器事業本部
Components Business Division
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