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【技術資料】CKD技報 Vol.1 (2015年)

その他

永年当社が蓄積してきた自動化を革新するための課題、問題解決への技術・研究開発の成果を技術情報としてご紹介いたします。

・両面アルミにおけるピールオープン包装
・ブリスター包装機 ~バーコード表示への対応~
・はんだ印刷検査機VPシリーズ
・錠剤・PTPシート外観検査装置 ~グローバルモデルの開発~
・ランプ製造設備のコア技術
・はんだ印刷検査遠隔モニタリングシステム「SmartRIn」
・食品包装機械における空気圧機器の使用事例
・Liイオン電池用製造装置

このカタログについて

ドキュメント名 【技術資料】CKD技報 Vol.1 (2015年)
ドキュメント種別 その他
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取り扱い企業 CKD株式会社 (この企業の取り扱いカタログ一覧)

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C K D 技 報               V o l ・ 1 2 0 1 5 年 1 月
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企業理念・経営理念・行動基準 Corporate Philosophy and Corporate Commitment 企業理念には、当社グループの進むべき方向を明確にするため 「流体制御と自動化の革新」を明記し、社会に貢献することを 企業理念 宣言しております。 経営理念は、企業理念を実現するために全社員が守らなければ ならない約束ごとを 5 項目に分け、全社員が責任を持って実行 経営理念 できる体制を目指してまいります。 行動規準は、企業理念および経営理念に基づき、全社員が順守 し実践すべき具体的な事項を定めたものです。 行動基準 企業理念 Corporate Philosophy 私達は創造的な知恵と技術で With creative knowledge and technology, 流体制御と自動化を革新し We shall innovate fluid control and automation, 豊かな社会づくりに貢献します。 Thus contribute to build rich society. 1 CKD 技報 2015 Vol.1
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目次 目次 「CKD技報」の発刊にあたって 1 両面アルミにおけるピールオープン包装 2 ブリスター包装機 ~バーコード表示への対応~ 8 はんだ印刷検査機VPシリーズ 13 錠剤・PTPシート外観検査装置 ~グローバルモデルの開発~ 17 ランプ製造設備のコア技術 22 はんだ印刷検査遠隔モニタリングシステム「SmartRIn」 29 食品包装機械における空気圧機器の使用事例 34 Liイオン電池用製造装置 37 CKD 技報 2015 Vol.1 2
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INDEX In regard to publish「 CKD technical journal」 1 Peel Open Package of Alu-Alu Blister 2 Blister Packaging Machine ~Response to Barcoded PTP-sheet~ 8 Solder Paste Inspection Machine VP Series 13 Tablet・PTP-sheet Visual Inspection Machine ~Development of Global Model~ 17 Core Technologies for Lamp Making Machines 22 Solder Paste Inspection Remote Monitoring System 29 Example of Using Pneumatic Components on Food Packaging Machine 34 Manufacturing Equipment for Lithium-ion Battery Cell 37 3 CKD 技報 2015 Vol.1
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ごあいさつ 「CKD技報」の発刊にあたって In regard to publish「 CKD technical journal」 野澤 好令 Yoshinori Nozawa CKD株式会社 代表取締役 常務執行役員 CKD Corporation Executive Director & Managing Executive Officer  CKDグループは「創造的な知恵と技術で 流体制御 CKD Group operates businesses with our と自動化を革新し 豊かな社会づくりに貢献します。」 corporate philosophy, "With creative knowledge を企業理念として事業を展開しています。 and technology, we shall innovate fluid control and automation, thus contribute to build rich  当社は、自動化技術のパイオニアとして、幅広い society." 分野でお客様の求める商品やサービスをグローバル As a pioneer of automation technology, we な視点から市場を把握し、最先端技術を取り入れた provide products of latest technologies, by 商品を提供しており、これからの市場が求めるニー understanding the demands of customers ズを常に見極め、世界のモノづくりの現場に当社の concerning products and services from a global 製品、技術を多くの方々に利用して頂く事により貢 perspective. We continuously value the needs of the market, contributing to society by providing 献して行きたいと考えています。 our products and technologies in production sites  技術開発はメーカにおける競争力の源泉であり、 all over the world. それは先人の知恵や蓄積された固有技術により支 Developing of technology is the source of a えられ、日々途切れることなく新たな開発がされて manufacturer's competitive strength. います。しかし昨今、日本のモノづくりを支えてき It is also based on the wisdom and accumulated technologies from our predecessors, and new た技術・技能は、技術者・技能者の高齢化により後 technologies are being developed continuously on 世への伝承が大きな課題となっています。 a daily basis. However, in recent days, technicians  今回、発刊する「CKD技報」は、永年当社が蓄積 and engineers face the problem of how such してきた自動化を革新するための課題、問題解決へ technologies can be handed to next generation. の技術・研究開発成果を、技術情報として紹介する This is mainly due to the aging of engineers. 物です。「CKD技報」から発信する情報が、お客様 "CKD technical journal" introduces agenda to innovate automation which we have persued for a への新たな技術提案となり、新たな情報を頂くきっ long time, and technologies and R&D results to かけになる。また、生産性の向上や新技術開発、技 solve problems, as technical information. 術者のモチベーションアップにつながり、課題で We hope information from "CKD technical ある技術・技能の伝承の一助になる事を期待してい journal" will be technology proposal for ます。 customers, and can be a trigger to withdraw new information, and will lead to improve productivity and develop new technologies and engineers' motivation, and will help handing technologies and techniques to next generation. CKD 技報 2015 Vol.1 1
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両面アルミにおけるピールオープン包装 Peel Open Package of Alu-Alu Blister 野田 尚彦 Naohiko Noda      鎌子 奈保美 Naomi Kamako  海外では主流となっているアルミラミネートフィルムを用いたPTP包装形態(両面アルミPTP)があるが、日本国内 においても大手製薬メーカや外資系製薬メーカを中心に数年前から徐々に増え始めてきた。両面アルミPTPに期待さ れていることは、防湿性、遮光性による錠剤の保護はもちろん、ピロー包装が不要になるといった省包装としても注目 されている。そんな中、錠剤が非常に脆く、いわゆるPTP包装形態(錠剤をポケット越しに押してアルミを破って取り 出す)では錠剤自体が破壊してしまい成立しないケースがある。そのような場合は過去においても、ピールオープン包 装形態(蓋アルミをめくって錠剤を取り出す)が採用されてきた。今回は両面アルミにおけるピールオープン包装技術 を包装形態、フィルム技術と共にチャイルドレジスタンス機能を持たせた包装形態もあわせて紹介する。 Press-Through Package form (Alu-Alu blister package) using aluminum laminate film on both sides, which is mainstream overseas, has also increased in major pharmaceutical manufacturers and foreign pharmaceutical manufacturers in Japan. What Alu-Alu blister package is expected is not only protection of tablet by moisture proof and light blocking effect but material saving because pillow wrapping is not necessary. However, in case that pills are very brittle, Press-Through Package form (taking pills by pushing pill through pocket) packaging cannot be used because pills may be broken. In such case, peel open packages (taking pills by peeling aluminum lid off) have been adopted. Here, we would like to introduce Peel Open Package of Alu-Alu Blister technology with package form and film technology, as well as package form with child resistance function. 1 はじめに 2 両面アルミPTPのフィルム構成  当社はPTP包装機における技術開発のひとつである  両面アルミPTPのポケット側フィルムは一般的に プラグ成形技術を応用して、熱可塑性樹脂フィルム以 『ONY25μm/接着剤/印刷/ AL40or45μm/接着 外のアルミラミネートフィルムもPTP包装に貢献出来 剤/ PVC60μm』という構成が主である(Fig.2)。 るように開発を行ってきた(Fig.1)。 Fig.1  薬品包装機 FBP-600E Fig.2  アルミラミネートフィルムの構成  アルミラミネートフィルムを用いたPTP包装形態(両  アルミメーカに協力頂き、両面アルミPTPの各種構 面アルミPTP)は錠剤が酸素、湿気、光から保護できる 成のフィルムテストを行った結果、やはり上記構成のも ことや、ピロー包装などの二次包装が不要である等のメ のがPTP包装として最も適している。その理由として リットから、数年前から日本国内でも国内大手製薬メー はPTP包装の基本的な機能として、 カや外資系製薬メーカを中心に徐々にではあるが増え 1) 錠剤の保護 続けている。しかし海外(欧米、韓国など)においては樹 2) ポケットを錠剤越しに押し、蓋側アルミを 脂フィルムと二分するほど主流となっているが、日本国    突き破って錠剤を取り出す。 内においては樹脂フィルムと違い、中身が見えない、見 がある。上記構成のものが、両方の機能を満たしている。 た目が単調等の理由から医療現場では医療過誤につな 例えば、両面アルミPTPは成形時にアルミラミネート がりかねないとして懸念されている。 フィルムを押し延ばしてポケット成形をするが、その成 形性を向上させようと、比較的延ばしやすい構成のラミ ネートを試した事がある。成形性は改善されたが、PTP 2 CKD 技報 2015 Vol.1
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両面アルミにおけるピールオープン包装 としてポケット自体が柔らかすぎ、機能を十分に満たせ 包装機のシールは蓋フィルム越しにヒートシールして ない結果となった。また逆にポケットが硬すぎても錠剤 おり、蓋フィルムが厚くなると熱伝導が悪くなり同様の を押し出しにくく、また場合によっては錠剤自体を破壊 シール性が確保出来るかが課題となる。 してしまう恐れがある。よって当社としては現段階にお  またポケット側としては、PTPのように錠剤をポケッ いては上記構成のものが最適と判断している。 ト越しに押し出す行為をしないため、ポケットを変形さ せる必要性はない。従来の両面アルミPTPのアルミラ 3 両面アルミにおけるピールオープン包装 ミネート構成でも問題は無いが、錠剤を保護するという 目的からするとポケットの強度はよりあったほうが良 3-1 ピールオープン包装とは い。ピールオープンで錠剤を取り出す必要がある錠剤と  両面アルミPTPの普及に伴い、PTP包装形態では成 いう事は錠剤自体が脆い可能性が高いと考えられるた 立しない錠剤が出てきた。つまり錠剤をポケット越しに め、ポケットの強度は出来るだけ硬いものを目指した 押して、蓋アルミを突き破って押し出すと錠剤自体が破 い。ポケット強度を上げるにはアルミラミネートフィル 壊してしまうほど脆い錠剤の場合である。 ムの構成を見直す必要があり、従来のものより厚いフィ  そのような場合は過去においても、ピールオープン包 ルムになる事が予想される。 装形態が採用されてきた(Fig.3)。  以上より、包材側、機械側から考えられる課題を整理 すると、 1) 硬いフィルムの成形性 2) シール性とめくり易さの両立 となる。  この課題を解決する為には、当社機械メーカだけで は解決できないため、包材メーカにも協力頂き、開発を 進めた。   3-3 包装形態の検討  テストを進めるにあたり、包装形態を検討した。目的 を理解したうえで、PTP包装形態と遜色のない形態にし なければならない。そのうえで以下の機能を重要視した。 Fig.3  一般的なピールオープン事例 1) 携帯性  ピールオープン包装とは、医療器具や雑貨品、食品で 2) めくり易さ は主流の蓋フィルムをめくって被包装品を取り出す包  世の中のトレンドとしては、包装形態が大きくなる 装形態の事である。 ことは許されない。環境性、携帯性を考えれば少しで  しかし錠剤などの固形製剤において、両面アルミ機 も小さい包装形態が良い。 能(バリア性、防湿性、遮光性)を有しながら、ピール  しかし、包装形態を小さくすればその反面、めくり難 オープンできる包装形態は極めて稀である。一部採用 くなる可能性がある。また安易にめくり易くすることは されている実績はあるが当社にはその技術は無く、こ 医薬品業界においてはリスクが生じるケースがある。そ れを機に当社の思想を取り入れた両面アルミにおける れは誤飲である。幼児には容易に開封することが出来な ピールオープン包装形態の開発を行った。 い、いわゆるチャイルドレジスタンス機能を考慮しなけ ればならない。また利用者がPTP包装形態と間違って 3-2 ピールオープン包装の課題 ポケットを押し出さない、いわゆるユニバーサルデザイ  両面アルミにおけるピールオープン包装を開発する ンも考慮しなければならない。 に当たり、包装品としての目的を整理した。  検討した結果、すべての機能を両立することは困難 1) 気密性が確保出来ていること であり、2種類の包装形態を開発する事とした。 2) イージーピールが出来ること 1) めくり易さを追求した包装形態 3) 錠剤を保護できること 2) 携帯性を追求した包装形態  気密性は、当然の事ながらPTPと同様でなければな らない。しかしながら、シールが強すぎると蓋フィルム 3-4 めくり易さを追求した包装形態 が容易にめくれない。またPTPと違って蓋アルミを突  めくり易いとは、指でつまんで蓋フィルムを剥がしや き破る必要性が無く、指でつまんで引っ張りながらめく すい包装形態である事。つまりつまみ部が認識しやす るため、逆に蓋フィルムに強度が必要となる。つまり蓋 く、且つつまみ易い形状である事である。よって必然的 フィルムの厚さを増すなど改良する必要がある。PTP につまみ部は指が添えられるように大きくなる。しかし CKD 技報 2015 Vol.1 3
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PTP包装としての携帯性も考慮しなければならないた 4-2 ラミネート構成 め、あまり大きく出来ない。よって検討した結果、5錠入  次に硬いフィルム構成を検討した。この検討には包 りPTPシートとした。なおこの際のポケット径はφ 材メーカにも協力頂き、成形性を考慮しながら硬さのあ 15mmである(Fig.4)。 るラミネート構成を模索した。各種構成のアルミラミ ネートフィルムを成形テストした結果、ある程度の硬さ があり、成形が良かった構成は、『ONY25μm/接着 剤/ AL40μm/接着剤/ ONY15μm/接着剤/ PVC100μm』である。この構成はPVCを従来の60μm より厚くし100μmとしたことによりポケットの強度を 増している。これ以上厚いと成形性に影響が出た。また 成形性を良くする為に従来は3層ラミネートのところを 4層として間にONY15μmを挟んでいる。これによっ Fig.4 ポケット径φ15mmの5錠入りシート て成形性を確保しながら、ポケット強度を増すことが可 3-5 携帯性を追求した包装形態 能となった。  PTP包装の大きさは基本的には従来のPTPシートと 同様とした。その中でつまみ部を設けなければならな 4-3 ポケット強度 い。限られたエリアの中でめくり部を検討した結果、先  出来たポケットの強度を測定した。ポケット径φ に述べたチャイルドレジスタンス機能も考慮した。 15mmの場合は先に述べた200gの力で押しても変形  この包装形態であれば1アクションでは開封出来ず、 しない事が分かった。そこで、どの程度ポケット強度に 幼児が間違って錠剤を取り出し誤飲する可能性は低い 差があるかを「押込み/引張り荷重測定器」を用いて測定 と考えられる。なおこの際のポケット径はφ10mmであ した。グラフより従来のアルミラミネートフィルムより る(Fig.5)。 2倍潰れにくい事が分かる(Table.1)。 Table.1  ポケット径φ15mmの押込み-反力 Fig.5 ポケット径φ10mmの10錠入りシート 4 成形テスト  同様にポケット径φ10mmの場合も先に述べた 4-1 ポケット強度の検討 250gの力で押しても変形しない事が分かった。こちら  包装形態が決まったため、課題のひとつである硬い も従来のアルミラミネートフィルムより2倍潰れにくい フィルムの成形テストを行った。まずは硬さの定義を決 事が分かる(Table.2)。 めなければならない。単純に考えれば、普段PTPシート Table.2  ポケット径φ10mmの押込み-反力 を携帯していてもアルミポケットが変形しない硬さ、で ある。しかし明確な数値化は困難なため、従来の両面ア ルミPTPのアルミポケットが変形する力では変形しな い硬さを定義とした。  測定の結果、従来の両面アルミPTPでポケットが変 形する力は、ポケット径φ15mmの場合は177gと分 かった。よって200gの力でポケットを押しても変形 しない強度である事とした。またポケット径φ10mm の場合は244gと分かった。よって250gの力でポケッ トを押しても変形しない強度である事とした。この数 字をまずは念頭に置く。 4 CKD 技報 2015 Vol.1
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両面アルミにおけるピールオープン包装  以上の測定結果より、従来のアルミラミネートフィル  以上によって、ある程度高温に強く、綺麗にはがれる ム並みの成形性を確保しながら、ポケット強度が2倍あ 蓋材の構成として、『OP/印刷/ AL20μm/ D/ るアルミラミネートフィルムの構成が決まった。 PET12μm/ HS』を選定した。白ベタ印刷品の場合は 1層追加になり、『OP/印刷/白ベタ/AL20μm/D/ 5 シールテスト PET12μm/ HS』となる。 5-1 イージーピールの定義 5-3 シール装置構成  ピールオープン包装の目的のひとつである、めくり  先に述べたように、ピールオープンの場合は通常より 易さを追求しながら、シール性を確保しなければなら もシール温度を高めに設定する必要がある。また白ベタ ない。その定義を決めた。 印刷品の場合は更に高温となる。通常のシール装置で  シール性は一般的なピールオープンブリスターと同 はシールが困難と判断し、以下の3構成のシール方法を 等である、-40kPaで30秒間リークが無いこと、とし テストした(Fig.6)。 た。またピール強度は過去のピールオープンの事例によ り10N以下とした。以上を満たすものをイージーピー ル(めくり易い)とした。 5-2 蓋フィルムの検討  イージーピールが出来る蓋フィルムの検討には包材 メーカの協力を得た。昨今の医薬品のトレンドを反映す る為に2種類の蓋フィルムを検討した。 1) 白ベタ印刷品 2) アルミ素地品  白ベタ印刷とは、蓋フィルム表側の素地となる色が全 Fig.6シールテスト方法 面白色に着色されている印刷のことを言う。厚労省から 通知が出ている「医療用医薬品へのバーコード表示の実 1) 従来のダイロールシール 施要領」によって、今後PTPシートにもバーコード表示 2) 予熱付きダイロールシール が義務付けされることになるが、現段階においてはバー 3) ダイロール巻きつけシール コードの読み取り性が最も良いとされているのが白ベ  ダイロールシールとは、クロス状線シール目の入った タ印刷と黒色表示バーコードのコントラストと言われ ダイロールを容器フィルムと蓋フィルム越しに圧力と ている。つまり白ベタ印刷品とは主にバーコード表示を 温度をかけて連続ロールでヒートシールする方法であ 目的としたアルミ蓋材のことである。 り、PTPでは一般的なシール方法である。  しかしながら、白ベタ印刷するということは、蓋フィ  予熱付きとは、ダイロールでシールする直前に予熱 ルム構成上、1層増えるばかりでなく、白色インキの中 板により予備加熱することである。ダイロールのみでは に含有されている酸化チタンの影響が少なからずある。 シール時間が足りず蓋フィルムのシーラント(接着層) 蓋フィルム越しにヒートシールをしてポケット側フィ が十分溶融しきれないことによる対策である。 ルムと熱溶着していくが、酸化チタンの影響でヒート  ダイロール巻きつけとは、上記の予熱板を使用せず、 シールの熱を奪われやすい。よって通常のPTPシート ダイロールへの蓋フィルムの入射角をダイロール側に においても白ベタ印刷品の場合はアルミ素地品と比較 巻きつけることによって、ダイロールに蓋フィルムが接 してシール温度は高めの設定となる事がある。今回の 触する時間を増し、予熱効果を狙った対策である。 ピールオープン用の蓋フィルムはめくり易さを考慮し て、更に厚い構成にしなければならず、シール性への影 5-4 シールテスト結果 響が課題となる。  白ベタ印刷品の結果は以下の通りである。判定はイー  以上の影響により、通常はピールオープン時の蓋フィ ジーピールの際に述べたリーク条件を満たしているこ ルム構成としては、強度を持たせる基材としてPET材 ととした(Table.3)。 を使用するが、白ベタ印刷品の場合は、ヒートシール温  従来のダイロールシールの場合、シール温度240℃ 度は最大280℃と高温の部類になり、表面層にPET材 の時はシール速度を4m/分にすればシール出来ること を使用すると変色の恐れがある。また、めくり時にポケ が分かった。これは通常の両面アルミPTPの半分の能 ット側から綺麗にはがれるためには、アルミ材が内面側 力である。また、シール温度260℃にすると、5.6m/分 であるとPTPシート特有のシール目であるクロス状線 の速度までシール可能になった。 シールの影響でアルミが破れる恐れもある。  予熱付きダイロールの場合は、予熱温度を140℃以上 CKD 技報 2015 Vol.1 5
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にすれば従来の能力でもシール出来ることが分かった。 てからでないと開封できない方式とした(Fig.8)。  ダイロール巻きつけの場合は、シールは出来たが、め   くり部のノンシール部にスジ状のシワが発生したため、 判定はNGとした。  よって白ベタ印刷品の場合は、ダイロールの直前に予 熱ヒータを具備することが必要となる。なおアルミ素地 品の場合は、従来のダイロールシールで問題なくシール 出来た。 Table.3  構成別のシール条件 Fig.7 5錠入りシートの開封方法 5-5 ピール強度  先に述べたイージーピールの定義により、ピール強 度10N以下がめくり易さの条件である。シールテスト の結果でリークOKとなったサンプルのピール強度を測 定した(Table.4)。 Fig.8 10錠入りシートの開封方法 Table.4  ピール強度結果 7 今後の課題  5錠入りシートは明らかにピールオープン形態をして おり、間違ってポケット越しに錠剤を押し出すことは少 ないと考える。また1ポケット単位に分割しても比較的 大きいため、間違って包装体ごと誤飲する危険性も少 ない。そういった意味ではユニバーサルデザインといっ ても良いと考える。課題としては、1シート当りの錠剤 数量が少ないことだろう。  10錠入りシートの場合は、従来シートと同様のシー  どのサンプルもピール強度10N以下を達成しており、 トサイズにした結果、つまみ部が小さくめくり難さがあ 官能的にもイージーピールであると関係者の評価を得 ることである。ただし、チャイルドレジスタンスの観点 ている。 からはそれでも良いとする考えもあるだろう。また PTP包装形態と勘違いして、ポケットを押す恐れがあ 6 開封方法 る。硬いポケットを力いっぱい押して、蓋フィルムの強 度も強いため、中の錠剤は粉々に破壊するだろう。これ  今回のピールオープン包装はポケットを1個単位に分 はシートなどへの表示で間違いを防止するほかは今の 割して開封するようにした。よってポケット単位にミシ ところ無い。 ン目で分割できるようにした。または開封部は、つまみ  誰にでも開封しやすくするか、幼児などには簡単に開 部をノッチ状にして折り曲げてめくるようにした 封できなくするか、医薬品における両側面の事情がある (Fig.7)。またチャイルドレジスタンスとしての機能は ため、それぞれの薬効に応じて、包装目的を明確にして 10錠入りシートで採用したミシン目を縦横2回分割し 使い分ける必要がある。 6 CKD 技報 2015 Vol.1
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両面アルミにおけるピールオープン包装 執筆者プロフィール 野田 尚彦 Naohiko Noda 鎌子 奈保美 Naomi Kamako 自動機械事業本部 開発部 自動機械事業本部 開発部  Research & Development Department Research & Development Department Automatic Machinery Business Division Automatic Machinery Business Division ■出典■ 製剤機械技術学会誌,22,42-47(2013) CKD 技報 2015 Vol.1 7
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ブリスター包装機 ~バーコード表示への対応~ Blister Packaging Machine ~Response to Barcoded PTP-sheet~ 田口 幸弘 Yukihiro Taguchi        2012年6月29日、厚生労働省より『「医療用医薬品へのバーコード表示の実施要領」の一部改正について』(医政経発 0629第1号・薬食安発0629第1号)が通知され、特段の事情が無い限り平成27年7月以降に製造販売業者から出荷さ れるものから、調剤包装単位のバーコード表示を実施することになった。これを機に製薬業界では、調剤包装に属する PTPシートの視認性・識別性向上を目的としたピッチ印刷の導入が急速に進んでいる。また、PTPシートに付記され たバーコードの読取性や外観品質の確保が、新たな課題となってくる。今回は、PTP包装工程において、ピッチ印刷 を実現する「マーク合わせ装置」と、シール目の影響などPTPシート特有な条件を考慮したバーコード検査装置「パト リード」を紹介する。 On June 29th, 2012, the Health, Labor, and Welfare Ministry issued the "partial amendment for implementation guidance of bar code display on ethical drugs" (Notification No. 0629-1 issued by the Director of Health Policy Bureau Economic Affairs Division, No. 0629-1 issued by the Director of Office of Pharmaceutical and Food Safety Bureau). Accordingly, each dispensing package, shipped by manufacturer/distributor as of July, 2015, must display a bar code, unless under exceptional circumstances. Pharmaceutical industry takes this opportunity to accelerate introducing constant pitch printing. In order to improve visibility and distinguishability of blister sheets that belong to dispensing packages. Also, readability of bar codes on blister sheets and quality of appearance will be next challenge. Here, we would like to introduce "Mark Registration Device" to realize constant pitch printing on blister package process and bar code checking device "PATREAD" meeting unique condition in blister sheets, such as influence of sealing mesh etc. 1 はじめに (主にアルミフィルム)を被せてシールし、その後打抜く ことでシート状の形態となる。  2012年6月29日、厚生労働省より『「医療用医薬品へ のバーコード表示の実施要領」の一部改正について』(医 政経発0629第1号・薬食安発0629第1号)が通知され た。これまでパブリックコメント(募集のための案)と して出されてはいたが、このほどいよいよ本格的に実施 することとなる。医薬品の取り違え事故の防止およびト レーサビリティの確保、そして医薬品流通の効率化が目 的である。これらを実現していくためには、さまざまな 課題があると思われるが、本稿では医薬品を包装する 形態として、最も知られているPTP包装における機械 側の対応事例を紹介する。 2 PTP 包装機とは  ブリスターは気泡という意味があり、容器フィルムを Fig.1  PTP 包装 成形し、内容物を充填したあと蓋フィルムなどでシール した包装品を、その形態から一般的にブリスターパック と呼ぶ。このうち、錠剤やカプセルを1錠ずつ包装する 形態は、PTP(Press Through Package)と呼ばれて いる(Fig.1)。  この包装形態のシート(PTPシート)を作り出す機械 をPTP包装機と呼ぶ。PTP包装の工程を簡単に示すと Fig.2のようになる。  容器フィルム(主にPVC、PPフィルム)にポケットを 成形し、その中へ錠剤を充填する。そして上蓋フィルム Fig.2  PTP 包装の工程図 8 CKD 技報 2015 Vol.1
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ブリスター包装機 ~バーコード表示への対応~ 3 PTP 包装に対する要求事項  医薬品を包装する最少の包装単位として、PTP包装 は通知文書における調剤包装単位に属する。またPTP 包装で主に取り扱う医薬品は、内用薬に該当すると考え られる。その前提に立って、PTP包装に対する要求事項 を抜粋すると次のような内容となる。 ① 表示するデータ  商品コードが必須表示である。有効期限、製造番号ま たは製造記号については必ずしも表示しなくても差し 支えないとされている。 Fig.3  デザイン上の注意事項 ② バーコードシンボル体系 4 機械側での対応事例  商品コードに加え、製造番号または製造記号および 有効期限を表示する場合は、GS1データバー限定型合  ここでは、バーコード表示に関する機械側の対応とし 成シンボルCC-Aを用いる。表示面積が少ない場合に て、以下の2項目の事例について紹介する。 はGS1データバー二層型合成シンボルCC-Aを用いる ことができる。 ① マーク合わせ装置  商品コードのみ表示する場合は、GS1データバー限 ② バーコード検査 定型を用いる。表示面積が少ない場合にはGS1データ バー二層型を用いることができる(Table.1)。 4-1 マーク合わせ装置 Table.1  バーコードシンボル体系  上蓋フィルムにあらかじめデザインされた印刷位置 と、成形ポケットとの位置合わせを行う装置である。  マーク合わせを行った場合のPTPシートの事例を Fig.4に示す。見易さが大きく向上するだけでなく、エ ンドレスデザインでなくなるため、ミシン目で切り離し が可能となる単位毎にバーコードを入れることができ る。表示したい内容が増えるほど有効になってくる。 ③ 新バーコード表示の実施時期  平成27年7月(ただし、年1回しか製造していないも の等特段の事情があるものについては平成28年7月) 以降に製造販売業者から出荷されるものについて表示 する。 ④ その他  PTPシート、坐剤コンテナ、点眼などのユニットドー Fig.4  マーク合わせ有無によるデザイン比較 ズなどの連包状の内袋については1連に少なくとも1カ 所の新バーコード表示を行うこと。  これを実現するための具体的な方法を次に示す。  内袋(PTPシート、分包シート等)への新バーコード  上蓋フィルム(一般的にはアルミフィルム)には、あら 表示に際しては、コード全体を枠囲みすることが望まし かじめ最終仕様寸法よりも若干短いピッチにて印刷を く、エンドレスデザインレイアウトの場合は必ず枠囲み 行っておく。 すること。  それを延伸させながらシールすることで、成形ポケッ  この④その他について、図示するとFig.3のように トと印刷との位置合わせを行う。装置の機構をFig.5に なる。 示す。 CKD 技報 2015 Vol.1 9
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ドの濃淡や線の太り細りなど印刷品質を測定し、その結 果によりグレードと呼ばれるA~ D、Fの区別に規定し ている。Fは欠陥(Fail)を表し、通常使用してはならない バーコードである。  「医療用医薬品新コード表示ガイドライン」(平成24 年8月1日版 日本製薬団体連合会)には、「使用する包 装資材の納品時において、グレードC以上のこと」と記 載されており、包装資材に対しては業界の基準が明記 されている。 ③PTPシートにおける課題 Fig.5  マーク合わせ装置 ・シール目の影響                      PTPシートは、容器フィルムとアルミ蓋フィルムを  シール装置とマーク合わせ装置との間で、フィルムス 熱接着する。防湿性を高めるため、シール目と呼ばれる ピードに速度差を設け、それにより上蓋フィルムの延伸 網目状のエンボス加工を施しており、表面が凹凸状態に を行う。0.2~ 0.3%が通常運転時の延伸量であり(諸条 なっている。ここに光源を照射すると凹凸部分で光の明 件により差はある)、最大で0.5%程度に設定する。 暗が発生し、照射方向を変えるとその度合いが変化す  通常のアルミフィルムであれば1%以上伸ばさないと る(Fig.6参照)。 破断には至らない。その場合、最大延伸量は0.5%より 大きくできる。しかし最近では1%以下でも破断に至る フィルムがある。ベースに(下地全面に)白着色層を設 けたフィルム(通称、白ベタフィルム)である。そのため 最大延伸量は0.5%に設定している。  この白着色層は、特にバーコードのコントラストを出 すためにたいへん有効である。その一方で特性として 「熱伝導が悪い」「破断しやすい」といったものがあり、 それに起因してシール設定温度の上昇やシール目部の 亀裂に発展する場合がある。また、酸化チタンを含んで Fig.6  シール目の影響 いることから打抜き型の寿命にも影響を及ぼす。そのほ か外観上、傷や汚れが目立つといった問題もある。  このように、PTPシート特有のシール目がバーコー  ただし、白着色仕様についてもさまざまな仕様があ ドの品質に影響を及ぼす。PTPシート特有の条件を考 る。顔料の添加量、濃度、厚さ等といったものや、白色 慮した専用システムを構築し、再現性のある品質検査を 塗料メーカの違いや1度塗りか2度塗りかといった違い 実施することが重要である(JIS X0520に基づく検証 がある。機械側においても、機械スピードやポケット・ は、平面シートに印刷されたものが対象である)。 シートデザインといった仕様の違いがあり、前述の問題 は一概に言えるものではない。 ・バーコードの読み取り性(照合)について  最近のバーコードリーダは、Fig.7のように、一見して 4-2 バーコード検査 バーコードに不  従来のバーコードにおける品質確認方法は、大きく分 備があるもので けて“照合”と“検証”の2つに分類された。 も読み取れるほ どに、高い性能の ① 照合 機種が多い。その  バーコードリーダ等により、バーコード(図形)を数 反面、誤読のリス 値にデコード(変換)し、その数値が既定の数値と一致し クも高まってい ているかを確認することである。デコードできないバー る。どのバーコー コードは、読み取り不可ということになる。 ドリーダで読み 取っても正しく ② 検証 読み取れる品質  バーコードリーダでの読み取りやすさの度合いを定 確保が重要であ Fig.7  最新のバーコードリーダに 量化することである。(JIS X0520に基づく)バーコー る。 おける読取りテスト 10 CKD 技報 2015 Vol.1
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ブリスター包装機 ~バーコード表示への対応~ ・バーコードの検証について                       検証は、復号(読み取り)が可能な走査線10本以上で 算出するという規定であり、読み取れなかった走査線は 対象外となる。  結果Fig.8のように、検証においても、外観上バー コードに欠陥あるものが良品判定となってしまう。これ Fig.10  コントラスト検査 は検証の目的が、バーコードリーダでの読み取りやすさ ・バーコードの照合 の度合いを定量化するところにあり、結局はバーコー  バーコードの読み取りを行い、既定の値との一致を検 ドリーダによる読み取りが基準になっているところに 査する。 ある。  アルミ包材の間違い、アルミ印刷時の版下間違いな  しかし、製薬メーカにおいて、PTPシートの外観とい どの防止になる。 うのは、品質の重要項目となっている。これまでさまざ まな品質向上対策を進めた結果、外観品質も向上し、今 ・外観検査 や、それ自体を重要項目としているところは多い。  アルミ印刷工程で発生し得るにじみやかすれといっ                      た不良や、シール工程や搬送工程で発生し得る欠陥、黒 点、白点、傷といった外観検査が可能である(Fig.11)。 Fig.8  検証における対象走査線 ④ バーコード検査装置 Fig.11  外観検査  これまでの照合や検証といったバーコードの確認方 ・位置検査 法のみでは、製薬メーカが求める品質基準に合致して  バーコードの印刷が正常な位置にあるかを検査する いるとは言い難い。そこでこのたび当社では、新たな (Fig.12)。 バーコード検査装置『パトリード』を開発した(Fig.9)。  それはシール目の影響を含んだ状態で検査できるよ                      う、シール後に配置し、全数検査を可能とするものである。 Fig.12  位置検査 1) 多種印刷対応  アルミデザインに柔軟に対応する。横方向印刷、縦方 向印刷、ピッチ印刷、流れ印刷のいずれも検査は可能で あり、1シート中に複数のバーコードがある場合や、印 刷方法が混在していても対応ができる(Fig.13)。 Fig.9  バーコード検査装置の取付配置例  そのバーコード検査装置『パトリード』の主な特徴を 以下に述べる。 ・バーコードのコントラスト  バーコード印刷の品質で最も重要な要素である。白 部、黒部のコントラスト(輝度差)を計測し、その差が所 定のレベル以上にあるかを検査する(Fig.10)。 Fig.13  アルミデザイン CKD 技報 2015 Vol.1 11
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2) 品種切換え性 5 おわりに  品種の切換えは、モニター上で品種番号を変更する のみで可能とした。  現在、世界規模で偽造医薬品が流通しており、偽造医  1台のカメラで1シート全面の撮影および検査を行 薬品の服用で多く人が健康被害を受けている。また、製 い、カメラ等の機械的な調整を不要とした。バーコード 薬企業の収益にも影響を及ぼしている。こうした偽造医 がPTPシート上のどの位置にあっても、また複数あっ 薬品の流通を防止するため、海外(特に欧州)ではトレー ても対応ができる。 サビリティの強化を目的として、2次元バーコードによ り、商品コード、ロット番号、使用期限、シリアルナン 3) コンパクト化 バーを販売単位あるいは調剤単位で表示することを進  検査ポジションの確保が容易になるよう、撮影部をコ めている。採用されているシンボルはデータマトリック ンパクトな設計とした。 スが主流である。  PTP包装機においても、こうした流れは無視できず、 さらなる多様な対応が必要になってくると考えられる。 執筆者プロフィール 田口 幸弘 Yukihiro Taguchi 自動機械事業本部 第1技術部 Engineering Department No.1 Automatic Machinery Business Division ■出典■ PHARM TECH JAPAN誌,2013年4月臨時増刊号 12 CKD 技報 2015 Vol.1
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はんだ印刷検査機VPシリーズ はんだ印刷検査機VPシリーズ Solder Paste Inspection Machine VP Series 梅村 信行 Nobuyuki Umemura      奥田 学 Manabu Okuda        電子機器の小型化・高機能化にともない、部品の微細化・多機能化、プリント基板の高密度実装化が急速に進んでいる。 実装部品が微細になるほど、安定した品質を保つことが難しくなる。特にはんだ印刷においては予期せぬ印刷不良が発 生するため、印刷機の性能向上とはんだ検査機の不良検出能力の向上が生産ラインの品質を保つためにカギとなる。し かしその一方で、検査機は生産タクトのボトルネック工程になってはならない為、不良検出能力を向上させつつ、検査 速度も高いレベルで達成させる必要がある。そこで、印刷マスクから転写された開口毎のはんだの体積量について、ラ インタクトを損なうことなく検査するという、ユーザーニーズに対応したはんだ印刷検査機VPシリーズを紹介する。 As a result of downsizing and sophistication of electronic devices, miniaturization, multi-functionizing of parts, and high density mounting of print circuit boards are accelerating rapidly. The smaller the mounting parts, the more difficult it will be to keep stable quality. Especially in solder pasting, unexpected printing failures may occur, therefore improving performance of screen printers and functions of solder pasting inspection machine to detect failures of solder pasting, will be integral to maintaining quality of production lines. On the other hand, inspection machines should not be a bottle neck process of the production tact. Therefore, improvement of failure inspection functions and high-level inspection speed must be achieved at the same time. Here, we would like to introduce VP series, solder pasting inspection machine which inspects volume of solder from every aperture of printing masks without affecting line tact. 1 はじめに 査ではんだ不良が検知できない部品における現実的な 方法である。そのためには、印刷したはんだ形状および  近年実装業界では3次元計測法によるはんだ印刷検 体積量を、きわめて高速に検査することが必要となる。 査の導入が進んでいる。当社はこの3次元計測法による  VPシリーズはまさにこのような市場の要求に答え、 はんだ印刷検査の重要性にいち早く着目し、1996年か お客様の生産ラインの生産性を低下させない高い高速 ら現在に至るまで、それまでの2次元計測法に替わり3 性を持ち、品質を高いレベルで安定させるツールとして 次元計測法を用いたはんだ印刷検査機をリリースして 開発した。 きた。その結果、当社のはんだ印刷検査機はお客様から 高い評価をいただき、また実装業界全体で3次元検査機 3 開発コンセプト の導入が進んでいることからも、3次元計測法によるは んだ印刷検査は「実装技術」にとって必要な技術であっ  前述の実装業界の背景を受けて、VPシリーズは下記 たと確信している。はんだ印刷検査装置は、「計測精度」、 のコンセプトで開発してきた。 「検査速度」、「操作性」を追求した製品となっている。 ・ 高速性 本稿ではこのVPシリーズについて紹介する。  FULL Mサイズ基板(330mm×250mm)を15秒で 検査できること。 2 開発背景 ・ 高精度  0402チップなどの微細な部品を含む基板で、はんだ  近年のデジタル家電をはじめとする電子機器の急速 印刷基板が安定して検査できること。 な高性能化、小型軽量化に伴い、基板の小型化、高密度 ・ 作業性の向上 化が急速に進んでいる。搭載部品においても微細化が  手袋をした状態でのタッチパネルの使用を前提とし、 進み、0402チップ及び狭ピッチCSP等の搭載が増加し ボタンは大きく、パネルも手袋をはめた状態で操作可 ている。CSP等の部品は基板との接合部が部品の底面 能なものを採用する。 に存在するため、部品搭載後におけるはんだ接合面の ・ 設置スペースの低減 検査は外観検査では不可能であり、導通テストあるいは  通路側、ライン方向への飛び出しが無い事。 X線による物体透過検査に頼る他はない。しかし、一般 ・ 人による作業を極力無くすこと 的にX線は取り扱いが難しく、インラインでの検査が困  画面のみで明確に不良が判別できる事。 難であるのが現状である。その結果、部品搭載前にはん だ接合部の状態を検査することが、リフロー後の外観検 CKD 技報 2015 Vol.1 13
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4 VPシリーズ装置紹介 4-1 計測原理 8500mm2  VPシリーズには3次元計測の基本原理として位相シ /sec フト法を用いている。位相シフト法とはモアレ法の一種 Fig.2 で、2次元的に変化する正弦波状の輝度分布を有する縞 状のパターン光を、斜め上方から複数回(位相を変化さ 4-3 近紫外線LEDプロジェクタ せて)計測対象物に投影し、これを真上から撮影して得  VPシリーズでは、3D計測光源に白色LEDに変わり、 られる画像から位相変位を求め、三角測量の原理により 当社特許技術である近紫外線LEDを採用した3D計測を 高さへ変換することで3次元計測を行うものである。10 導入した。近年基板の多様化からレジスト材質、厚さな 年以上の歴史を持つ当社の3次元はんだ印刷検査機は、 どが多岐にわたり、白色LEDでは材質による反射率の この位相シフト法及びその応用であるカラー格子縞位 変動により基準点の位置を安定して計測する事が出来 相シフト法を採用している。この位相シフト法の優れた なくなってきた。そこで、紫外線の表層反射する特性に 特徴を下記に紹介する。 着目し、3D光源を近紫外線化する事で、基板表面を確 ① 安定した計測原理 実に計測し印刷条件の変動を効果的に確認する事を可  画像処理は一般に外乱光、照明ムラおよび被写体の 能とした。 反射率の変化などから計測結果に大きな影響が発生し、 そのために数々の補正などを行うが、位相シフト法では 4-4 分解能切り替え機能 複数枚の画像からの位相変化を捉えることから明暗に  VPシリーズでは、検査対象基板の部品単位で分解能 左右され難く、安定した3次元計測が可能となる。 を切り替える事を可能とした。本機能を用いる事で特定 ② 高速検査が可能 パット(例えばφ300μm CSPパットや狭ピッチコネ  カメラを用いた計測であるため、視野単位の検査とな クタなど)のみを高分解で計測し、通常のパットは高速 る。よって、はんだが存在する領域のみの計測で済むた な標準分解能で計測する事が出来る。瞬時に切り替え め、高速検査が可能となる。 を行う事で、検査速度を損なわずに検査精度を向上す る事を可能とした。  正弦波状の パターン光 Fig.3 4-5 はんだ追従機能  はんだが位置ずれして印刷されても位置ずれ量に検 査ウインドウが追従し、位置ずれ量を正確に検出する事 が可能である。 Fig.1 4-2 超高速検査  超高速8500mm2/secの検査速度。超高速マウンター ラインでもラインタクトを損なうことなく全点全個所 フル3D計測が可能である。 Fig.4 14 CKD 技報 2015 Vol.1
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はんだ印刷検査機VPシリーズ 4-6 環境対応 データを解析する統計機能を強化した。これにより全生  生産設備として、環境への対応も考慮するため、VP 産基板のはんだ印刷の状況が詳細に解析でき、はんだ シリーズはRoHS指令に対応した。さらに精度に関わる 印刷における工程管理を強力にサポートできる。 リニアガイドや、ボールネジは全てメンテナンスフリー 品を採用する事で給油の手間や使用オイル量を削減し た。また、単一の電源のみで動作できるようにエアレス 化を実現した。VPシリーズは多角的な面から地球環境 に配慮している。 Fig.7 Fig.5 ・トレーサビリティへの対応 4-7 フレキシブルな拡張性  VPシリーズではオプションにて、1、2次元バーコー  VPシリーズには検査機本体の他に、検査プログラム ドによる基板識別番号(シリアル番号など)を装置内の の作成および編集、様々な検査結果を閲覧できるデータ カメラで認識することができる。これにより出荷された ステーション(オプション)を用意している。1台のデー 製品の生産時におけるはんだ印刷状態などの調査を迅 タステーションにはVPシリーズを最大6台まで接続で 速に行う事ができ、不具合発生の原因追求と再発防止 き、複数ラインのはんだ印刷状況をリアルタイムに集中 に貢献する。 管理することができる。 Fig.6 4-8 その他特徴 ・高精度な検査  位相シフト法と2D照明を組み合わせた、当社独自の 計測システムの採用(当社特許技術)により、繰り返し精 度2~ 3%以下(※1)の高精度な検査を実現した。 ・設置性を最優先したデザイン Fig.8  モニタやキーボードを機械扉に組み込む事で機械寸 法外への突起物が無くラインに無理なく収まる。さらに 4-9 仕様 機械正面の扉も機械幅内で開閉できる。これにより前後  VPシリーズの仕様を以下にしめす。 工程機と密着した状態での設置 Table.1 においてもメンテナンス性を確保 できる。 ・カラー画像表示  NGやワーニングが発生した際 にパット形状を確認する計測画 面はカラー表示機能を採用した。 ・データ解析ツール  オプションであるデータステー ションでは、VPシリーズから送 られてくるリアルタイムの検査 CKD 技報 2015 Vol.1 15
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5 生産性改善への取り組み 6 おわりに ・フィードバック/フィードフォワード  はんだ印刷検査機の精度、機能は市場の必要性に応  電子部品の小型軽量化に伴い、はんだ印刷のむずか じて急速な発展を遂げてきた。今後はこのような基本的 しさにかかわる要因だけでなく、基板や印刷マスクの伸 な性能及び機能の向上と同時に、地球環境に配慮した びといった材料にかかわる要因も製品の品質にかかわっ 省資源・省エネルギーに貢献できる装置の開発が重要と てくる。 なる。当社としては、お客様のラインの品質向上に貢献  これに対応する為には機械単体だけでなく生産ライ できる装置を開発することで、ラインの稼働率を向上さ ン全体で品質安定化に取り組む必要がある。 せ、使用エネルギーを削減することに貢献できる商品の  微細部品を安定して搭載する為には 開発を進めていく。 ① 基板電極位置にはんだを正しく印刷する。  当社は今後もはんだ印刷検査という分野から実装技 ② はんだの上に部品を搭載する。 術の発展に寄与すべく、グローバルな市場要求を取り  この基本的な二つの機能が今後ますます重要となる。 入れながら技術の開発、展開を進めていく。 この課題を克服する為に印刷検査機の情報を起点に下 記を実践させることで03015チップなどの微細部品搭 載が可能となる。 ① 印刷検査機にて検査したはんだ位置ずれ情報を前工 程の印刷機へ送り、ずれ量を補正させるフィードバッ ク機能。 ② 印刷検査機にて検査したはんだ位置ずれ情報を後工 程のマウンターへ送る事でずれたはんだ印刷位置へ 部品を搭載させるフィードフォワード機能。 Fig.9 執筆者プロフィール 梅村 信行 Nobuyuki Umemura 奥田 学 Manabu Okuda 喜开理(中国)有限公司 自動機械生産部 自動機械事業本部 第3技術部 CKD(China)Corporation Engineering Department No.3 Automatic Machinery Production Department Automatic Machinery Business Division 16 CKD 技報 2015 Vol.1