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【技術資料集】CKD技報 Vol.4 (2018年)

その他

永年当社が蓄積してきた自動化を革新するための課題、問題解決への技術・研究開発の成果を技術情報としてご紹介いたします。

・PTPシート・錠剤異物検査装置の高機能・高速化
・電空レギュレータ技術
・精密加工に求められるリニアステージ技術
・薬品用ブリスタ包装機におけるGS1データバーの現状と将来展望
・食品包装機における窒素置換について
・シングルヘッドデュアルレーン仕様のはんだ印刷検査機の開発
・巻回機におけるデータ活用
・油圧緩衝器ショックキラーの高タクト化技術
・薬液バルブの5MPa高圧対応技術
・薄板コイル技術を用いた大電流ノイズフィルタ

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ドキュメント名 【技術資料集】CKD技報 Vol.4 (2018年)
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C K D 技 報               V o l ・ 4 2 0 1 8 年 1 月
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1 CKD 技報 2018 Vol.4
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目次 目次 技術を磨き変化に追従 1 巻内特集 テーマ「高精度」 PTPシート・錠剤異物検査装置の高機能・高速化 2 電空レギュレータ技術 6 精密加工に求められるリニアステージ技術 10 薬品用ブリスタ包装機におけるGS1データバーの現状と将来展望 15 食品包装機における窒素置換について 19 シングルヘッドデュアルレーン仕様のはんだ印刷検査機の開発 22 巻回機におけるデータ活用 26 油圧緩衝器ショックキラーの高タクト化技術 29 薬液バルブの5MPa高圧対応技術 33 薄板コイル技術を用いた大電流ノイズフィルタ 36 CKD 技報 2018 Vol.4 2
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Table of Contents Sharpening our skills to adapt to the change 1 Special Report on“ High Precision” High End and High Speed Foreign Particle Inspection Machine for Blister Sheet and Tablet 2 Electro-Pneumatic Regulator Technology 6 Linear Stage Technology Required for Precision Machining 10 Present Situation and Future Prospect of GSI Data Bar on Pharmaceutical Blister Packaging Machine 15 N2 Gas Flushing System in Food Packaging Machine 19 Development of the Solder Paste Inspection Machine of Single Head Dual Lane Specifications 22 Utilization of Data Obtained from Winding Machines 26 Takt Time Reduction Technology in Hydraulic Shock Absorber“ Shock Killer” 29 Technology for Handling High Pressure (5 M Pa) in Chemical Liquid Valves 33 High-Current Noise Filter Utilizing Thin Plate Coil Technology 36 3 CKD 技報 2018 Vol.4
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ごあいさつ 技術を磨き変化に追従 Sharpening our skills to adapt to the change 西尾 竜也 Tatsuya Nishio CKD株式会社 取締役 執行役員 CKD Corporation Director & Executive Officer  ドイツ発のインダストリー4.0に続いてConnected Following on the heels of the German-born Industriesが日本でも打ち出され、一方では環境 Industry 4.0 is the Connected Industries, which has also been launched in Japan. On one hand, 問題から電気自動車への流れが世界的に加速す from environmental issues to electric cars, るなど、製造業を取り巻く環境は大きな変化に突 which is gaining worldwide momentum, the stage surrounding the manufacturing industry 入しています。私たちCKDも、企業理念である will see a great transformation. We at CKD have 「流体制御と自動化を革新する」ことで、時代の a corporate vision to“ Reform Fluid Control and Automation,” and we have strengthened our 変化に追従していかなければとの思いを強くし mindsets to follow the trends of the changing ています。変化に追従するためには、まずやって times. In order to follow this change, it is important to みることが大切で、私たちの工場でも一部でIoT first make a sincere effort. Therefore, certain の活用を始めました。頭でっかちにならず、でき sections of our factories have started to adopt るだけモノに触れモノを動かしていく中で、光る the IoT. Without becoming top-heavy, our passion to work with materials and creating 技術をつくり上げていければと思っています。 new products will develop bright new  さて、今年もCKD技報の第四刊を皆様にお届 technologies. This year, we have prepared our Vol. 4 けいたします。今回は少し変化をつけ、まず特集 Technical Journal just for you. With a little として「高精度」を取り上げてみました。自動化の variation to the usual publication, we would like to do a special report on“ High precision” since 波に対し、設備にはより高いレベルでコントロー the path of automation requires equipment to ルできる機器が求められます。今後も皆様に興 have components with a high level of control. In order to have all of you interested in our 味を持っていただき、さらにはお役にたてる特集 efforts, we will continue to refine our technology が組めるよう技術を磨いていきます。もうひとつ so that useful reports may be published. In addition, our newest member to our group, CKD は新たにグループの一員となりましたCKD日機 NIKKI DENSO CO., LTD., will make their first 電装株式会社からの初投稿です。CKD日機電装 posting in this edition. They will continue to 株式会社の高い技術力も、これから皆様に発信 post articles concerning their high technological skills as we strive to meet your expectations in していきますのでご期待ください。 the reports to come. CKD 技報 2018 Vol.4 1
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巻内特集 テーマ「高精度」 PTPシート・錠剤異物検査装置の高機能・高速化 High End and High Speed Foreign Particle Inspection Machine for Blister Sheet and Tablet 大谷 剛将 Takamasa Ohtani  当社では、2013年に1分間あたり800シートの生産能力をもつ薬品用ブリスタ包装機FBP-800Eの販売を開始 した。同時にインライン錠剤異物検査装置も高速に安定した検査を行うため、1分間あたり800シートの検査が可能 なフラッシュパトリFP820の販売を開始した。近年、薬品包装工程において、より高速で品質の高い製品を製造す ることが求められる。こうしたニーズに応えるために、「高解像度」、「高速検査」、「省スペース」、「多機能」の4つ の特徴をもつ高性能な錠剤異物検査装置フラッシュパトリFP830を開発した。本稿では、フラッシュパトリFP830 について紹介する。 In 2013 we launched a new pharmaceutical blister packaging machine model: FBP-800E with the capacity of 800 blister sheets/min. At the same time a new in-line inspection machine FlashPatri FP820 capable of inspecting 800 blister sheets/min was released to realize stable and high speed inspection for tablet and foreign particle. Recently blister sheets are required to be better in quality and to be produced in faster speed. In response to these requirement, FlashPatri FP830 has been developed as a high end in-line inspection machine for tablet and foreign particle, equipped with four outstanding features of“ High resolution” , ”High speed inspection”,“ Space saving”, and“ Multi-functions”. This article will introduce the new in-line inspection machine FlashPatri FP830. 1 はじめに 2 FP830の紹介  近年、医薬品包装業界では、ジェネリック医薬品の 2-1 概要 普及と委受託製造の活発化に伴い、多品種生産対応や、  高速タイプの薬品包装機は、1分間あたりPTPシー それに伴う時間あたりの生産量増加により、包装ライ ト800枚の生産能力を有する。この速さに対応したイ ンスピードの高速化を図る企業が増えてきている。ま ンラインでの全数検査をするためには、高速撮影、高 た、ジェネリック医薬品は特許が切れた後発医薬品の 速画像転送、高速演算が要求され、1シートあたり0.15 ため、各製薬メーカが製造しており、他社との差別化 秒の間に撮影から検査処理、判定結果出力までを完了 を図るため様々な工夫を凝らしている。例えば、薬剤 させる必要がある。今回開発したFP830では、人工知 師による調剤間違えの防止や誤飲防止のために、錠剤 能技術等に使用される高性能コンピューティングを使 の両面に識別情報を印刷したり、錠剤の色や形状を特 用することで、高速で高解像度なカメラに対応した画 殊にしたりと視認性向上を図ることがある。 像演算処理が可能になり、高速タイプの薬品包装機に  これらの背景があり、薬品包装工程の設備では、包 対応した高性能で安定した検査を実現した。 装機械の高速化、多種多様な錠剤包装に対応する要求  また、柔軟な検査対応のために、下記2点を新機能と が高まっていると共に、同工程を流れる包装品のイン して追加した。 ライン外観検査においても、同様の対応、加えて高精 ①両面印刷錠の高精度対応 度で安定した検査の需要が高まっている。  錠剤の印刷部を鮮明に撮像し、表と裏の異なる印  検査装置が多種多様な錠剤に対応するためには、 刷を瞬時に判断し、高速検査する。今回、当社の従 品種毎に照明方法や撮影方法、検査パラメータを切 来装置FP820に対して、カメラ解像度を1.6倍、画 り替え、適切な検査が行えるようにする柔軟性が必 像演算処理能力を6倍に向上させたことにより、従 要になる。また、PTPシートの各包装工程上に各検 来困難であった両面印刷錠検査の高精度化を実現 査を行うためのカメラを設置するが、限られた設置 した。 スペースで各検査を満足させるコンパクト性や、複 ②撮影方式の切り替え 数の高精度カメラを高速に処理できる演算能力も必  FP830では、近赤外線光を使う白黒画像による検 要とされる。 査と可視光を使うカラー画像による検査を品種毎に   こ れらの 要 求 に 応 え るた めフラッシュパトリ 切り替え、実施することができる。この機能により、 FP830を開発した。 多種多様な錠剤に対して、適切な照明方式と撮影方 式を切り替えてフレキシブルな検査を実現した。 2 CKD 技報 2018 Vol.4
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【巻内特集】 PTPシート・錠剤異物検査装置の高機能・高速化 Fig. 1  検査装置の搭載イメージ  また、当社の薬品包装機は連続送りの機械であるた め、検査機の撮影は連続して搬送されているシートを 撮影、検査する必要がある。従来のFP820では、1つ のシートが検査に適したカメラ視野を通過するまで に、2回の撮影が限界であった。そのため、検査種類に よっては最大4台のカメラで合計5回の撮影を行って いたが、カメラの設置スペースが大きく取られ、その 機構は複雑な構成になっていた。FP830では、高速で 高解像度なカメラと、従来比約3倍の画像転送速度を 有する光伝送方式を開発したことによって、1台のカ メラで最大6回の撮影、高解像度画像の高速転送が可 能となり、カメラの台数の削減、機構の簡略による省 スペース化を実現した。 2-2 インライン検査装置の紹介 Fig. 2  検査イメージ  薬品包装におけるインライン検査装置「フラッシュ パトリ」は、大きく分けると3つのポジションで検査を 行っている。(Fig. 1) ①容器フィルム原反検査(FP-C)  容器フィルムの加熱・成形前の工程において、容 器フィルム原反に付着、または練り込まれた異物を 検査する。 ②シール前検査(FP-α、T1)  容器フィルムに錠剤を収納するポケットを成形 し、そこに錠剤を充填した直後、蓋アルミ包材を熱 シールする前の工程において、錠剤・容器フィルム あるいは錠剤に付着した異物、錠剤の割れ、欠け、 錠剤色違い、コーティング剥離、チッピング(錠剤表 面の欠け)の検査を行う。 ③シール後検査(FP-β)  蓋アルミ包材を熱シールした直後、スリッタ・刻 Fig. 3  検査項目一覧 印を入れる前の工程において、錠剤あるいは蓋ア ルミ包材に付着した異物、錠剤の割れ、欠け、錠剤 色違い、コーティング剥離、ノンシール(蓋アルミ  なお、FP830は、1分間に800シート以下の薬品包 包材未接着)、蓋アルミ包材のシワ、蓋アルミ包材 装機(2列シート取り、最大400打ち抜きショット/分) の破れの検査を行う。(Fig. 2)、(Fig. 3) に搭載される検査装置である。 CKD 技報 2018 Vol.4 3
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3 FP830の特徴 3-4 多機能化への取り組み 3-4-1 印刷錠の検査精度向上 3-1 検査精度の向上「高精度」  近年、医薬品の取り違えを防止するために、表面に  品質の高い製品を製造することが求められており、 凹凸を施した刻印錠剤から、表面に製品名や含量を印 小さな異物も鮮明に撮像し、安定した検査をする事が 字する印刷錠剤の形態に変わってきている。さらに、 重要である。カメラ解像度が高いほど錠剤や付着異物 錠剤の視認性を高めるため、両面に識別情報を印刷す をより鮮明に撮像することが可能になる。FP830で る両面印刷錠が増えてきた。 は、800万画素のカメラを採用し、FP820の500万画  従来のFP820では、印刷をすべて囲む外接四角形の 素から大幅に解像度が向上した。これにより、より高 枠を貼り、その枠内を異物検査の対象外(以下、マスク い精度で微小な異物を安定検出することが可能とな 処理)にしていた。さらに表裏で印刷が異なる錠剤にお る。(Fig. 4) いては、印刷範囲の広い方に合わせてマスク処理を 行っていた。この方式では、錠剤印刷範囲が広いほど、 異物を検査する範囲が狭くなってしまう課題があっ た。(Fig. 6) Fig. 4  カメラ解像度比較 3-2 撮影した画像の高速検査  カメラの解像度が向上するほど、高速に画像処理を Fig. 6  従来の表裏で印刷の異なる錠剤の検査 行う必要がある。FP830では、検査アルゴリズムの改 善と最適化、高速演算ユニットを活用した分散処理や  そこでFP830では、外接四角形ではなく、印刷文字 並列演算を行うことで、従来に比べ処理能力を6倍に の形でマスク処理を行うことで異物検査範囲を極限ま 向上させ、高速検査を実現した。 で拡大することができた。なお、表裏で印刷の異なる 錠剤でも瞬時にどちらの印刷か判断し、適切なマスク 3-3 検査ステージの集約「省スペース化」 処理が行うことができる。これにより、異物検査範囲  FP820は、薬品包装機のシール前検査、シール後検 を拡大することが可能となる。(Fig. 7) 査を5つの検査ステージに分かれて検査を行ってお り、すべての装置を搭載すると大きな設置スペースが 必要になり、機械も大きくなる。また、薬品包装機に よっては、その設置スペースを確保できず、すべての 装置を搭載できない場合があった。  FP830では、高速に撮影可能なカメラ、高速に通信 可能なインターフェースを使用し、1つのステージで 最大6回の撮影を可能にした。これにより、従来の FP820–A、D、T2の3つの検査ステージをFP830–α の1ステージに集約し、世界最小の省スペース化を実 現した。(Fig. 5) Fig. 7  今回の表裏で印刷の異なる錠剤の検査 3-4-2 撮影方式の切り替えによる検査精度向上  フラッシュパトリの名前の由来でもあるフラッシュ 機能は、近赤外線光を照明に用いることで錠剤印刷、 シート印刷(蓋フィルムの印刷)の影響を受けることな く、シート全面の異物検査が可能となる。近赤外線光 は、異物検査には非常に有効な手段であるが、ごく稀 に褐色錠剤の場合に、錠剤が近赤外線光を吸収するこ Fig. 5  装置搭載イメージ とで錠剤と背景との明るさの差が小さくなり、錠剤の 4 CKD 技報 2018 Vol.4
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【巻内特集】 PTPシート・錠剤異物検査装置の高機能・高速化 抽出が難しい品種がある。従来のFP820では、可視光 4 おわりに による検査装置を追加することで対応をしてきたが機 構が複雑になっていた。FP830シリーズでは、近赤外  近年、生産現場ではタブレット型端末やAI等の技術 線光を使う白黒画像による検査と可視光を使うカラー が活用され始めている。今後フラッシュパトリは、更 画像による検査を品種毎に切り替える機能を搭載する に高速・高精度を目指すことはもちろんのこと、これら ことにより、新たな装置を追加することなくシンプル を取り入れることにより、作業の効率化、省人化に貢 でフレキシブルな検査を可能とした。(Fig. 8) 献し、便利で使いやすい装置を目指していく。 Fig. 8  表面色が濃い錠剤の対応 3-4-3 ペーパーレス対応  フラッシュパトリでは、生産データをHDDに格納し ている。  従来は、生産管理を行うにあたり、プリンタで生産 データを一枚一枚印刷して保管管理する方法が一般 的であった。FP830では、生産データを改ざん困難 なPDF形式にし、外部メディアに保存できる機能を 追加した。これにより、紙代、印刷代といったコスト と文書の保管スペースが削減でき、省スペース化にも 貢献できる。また、電子化により検索性が向上し、確 認作業に対してスピーディに対応することも可能と なる。(Fig. 9) 執筆者プロフィール Fig. 9  電子管理イメージ 大谷 剛将 Takamasa Ohtani 自動機械事業本部 第1技術部 Engineering Department No. 1 Automatic Machinery Business Division CKD 技報 2018 Vol.4 5
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巻内特集 テーマ「高精度」 電空レギュレータ技術 Electro-Pneumatic Regulator Technology 長崎 功 Isao Nagasaki   電空レギュレータは比例制御弁に分類され、電気信号である入力に比例した空気圧力を連続的にコントロールす る機器である。初期モデルの発売からおおよそ30年が経過し、生産設備の多品種生産対応や高機能・高精度化に伴 う市場からの要求に対応すべく進化を続けてきた。本稿では電空レギュレータの概要・高精度化技術の一例を紹介 する。 An electro-pneumatic regulator is classified as a proportional control valve. It continuously controls air pressure in proportion to the input (electric signal). Since the launch of its first model thirty years ago, CKD’s electro- pneumatic regulator has been evolving to accommodate production of various products in factories and to meet the demands of the market for high functionality and high precision. This paper presents an overview and an example of high-precision technologies of CKD’s electro-pneumatic regulator. 1 はじめに 電気信号をパイロット室の圧力へ変換する給気用/排 気用のアクチュエータ、パイロット室とフィードバック  生産設備の多機能化・自動化・省力化が進むと共に各 室の圧力差を力へ変換するダイアフラム組立、その力 種の空気圧機器が使用されてきた。近年では、生産設備 により開閉される給気弁/排気弁で構成される。 の多品種生産対応や高機能・高精度化に伴い、空気圧機  実際の動作をFig. 2に示す。 器も自由度を持たせる必要が出てきた。つまり、シリン ダや治具の空気圧によって発生する力、空気の流量を 変化させる要求が出てきている。これらの制御を行なう ときに空気圧を入力信号に比例して変化させる電空レ ギュレータが使用されている。 2 電空レギュレータについて 2-1 構成と動作原理  電空レギュレータは入力信号と内部に搭載された圧 力センサ信号の差に応じて動作させるフィードバック 制御を用いている。Fig. 1に示すように制御基板からの Fig. 2  動作概要図  「入力信号>圧力センサ信号」の場合、給気用電磁弁 がON、排気用電磁弁がOFFとなる。このため、供給圧 力が給気用電磁弁を通してパイロット室に印加され、 「パイロット室圧力>フィードバック室」となりダイア フラム組立へ下方向への力が作用する。その結果、給気 弁を押し下げ供給圧力が制御圧力側へ流れ圧力が上昇 する。この動作をパイロット室とフィードバック室がバ ランスするまで継続する。  また、逆に「入力信号<圧力センサ信号」の場合、給気 用電磁弁がOFF、排気用電磁弁がONとなる。このため、 パイロット室力が排気用電磁弁を通してEXHポートへ 流れ、「パイロット室圧力<フィードバック室」となり ダイアフラム組立へ上方向への力が作用する。その結 Fig. 1  電空レギュレータ内部構造 果、排気弁を押し上げ制御圧力がEXHポートへ流れ圧 6 CKD 技報 2018 Vol.4
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【巻内特集】 電空レギュレータ技術 力が下降する。この動作をパイロット室とフィードバッ 3 電磁弁の制御方法 ク室がバランスするまで継続する。  Fig. 4に電空レギュレータに採用した電磁弁をPWM 2-2 電空レギュレータと制御方式の歴史 制御した際の流量特性を示す。供給圧力を0.1、0.3、  電空レギュレータに用いられるアクチュエータにつ 0.5、0.7MPaと変えた場合で電磁弁への加圧は弁座 いては様々な方式がとられる。当社では、電空レギュ が圧力を受ける方向である(Fig. 5)ため、Dutyの上昇 レータを開発する際にアクチュエータ選定で重要とし と共に電磁弁を通過する流量が比例的に増加してい ている項目が以下に挙げる4点である。 る。この結果より、電磁弁はPWM制御により流量を比  ①入力に対して比例な出力(流量)がされること 例的に出力可能なアクチュエータとして満足できた  ②高寿命であること が、課題も発生した。不感帯と定義しているDutyが低  ③高速動作可能(高応答)であること く流量が流れない領域があるが、この不感帯が供給圧  ④小型であること 力の影響を受けており、供給圧力の増加と共に減少す  電空レギュレータの歴史(Fig. 3、Table 1)をたどっ る傾向がある。これは、電磁弁が圧力バランスをとっ てみると様々なアクチュエータが選定されてきた。近 ていない構造であるため、供給圧力が上昇すると弁座 年では、総合空圧メーカである利点(設計ノウハウが豊 からエアが漏れ出しやすくなるためである。 富、安価で製作可能)を生かし、電磁弁PWM制御を採用 して市場要求にマッチした製品開発を進めている。 (補足) PWM(Pulse width modulation)とは電気信号の一形態で あり、パルス幅変調と呼ばれ、一定周期のパルス幅のONと OFFの時間の比(Duty比)を制御する方式である。 Fig. 4  電磁弁のDuty- 流量特性 Fig. 3  電空レギュレータの歴史 Table 1  アクチュエータ方式について Fig. 5  電磁弁の内部構造  電空レギュレータは、偏差(入力信号と制御圧力の差) の大きさによって、電磁弁印加信号の大きさを変え、 パイロット室に給排気する流量を変えることにより、 圧力制御を行っている。電磁弁の流量特性には不感帯 CKD 技報 2018 Vol.4 7
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があるため、Fig. 6のように排気用電磁弁印加信号と 給気用電磁弁印加信号を連続してつなげると、流量特 性に不感帯が発生するため、高速かつ精度の良い圧力 制御ができない。  そこで、偏差がゼロの状態でも電磁弁を駆動させる ためバイアスと呼ばれる成分をオフセットすることに より不感帯の使用をキャンセルしている。(Fig. 7) Fig. 8  従来制御ブロック図  そこで、2014年に発売したEVRシリーズではそれ らの課題を解決するため新しい制御方式(Fig. 9)を取 り入れた。解決手段として、内部の制御基板に搭載さ Fig. 6  偏差と電磁弁の動作 れたCPUにより前述で示した定常偏差に応じた補正 成分を疑似的な入力信号として可変する方法である。 本手段の優位な点として“従来制御ループの構成が維 持されるため、制御性の維持が容易”ということが挙げ られる。  また、センサ信号を入力信号補正用・偏差生成用に 分岐されている箇所を外部センサへ変更すること (Fig. 10)により容易に制御ループが構成可能な点も Fig. 7  バイアスをオフセットした時の動作 優位点として挙げられる。ユースポイントに設置した 外部センサにより、荷重や流量を制御することが可能 で、様々なシーンでの活用が見込まれる方式である。 4 フィードバック制御方法               電空レギュレータのアクチュエータとして電磁弁 PWM制御の課題は、以下が挙げられる。  ・アクチュエータの作動劣化  ・供給圧力条件による不感帯の変化  電磁弁は作動劣化・圧力条件により作動電流、つま り不感帯が変化してしまう。これは、製品製造時に設 定したバイアス値で不感帯をキャンセルしていたが、 作動を繰り返す中で不感帯が広がり、電空レギュレー タとしても制御の不感帯が発生してしまうことを表 す。 Fig. 9  新制御ブロック図  従来品のフィードバック制御ブロック図をFig. 8へ 表す。特徴的なことは、本制御ブロック図にはPID制御 中の積分成分が含まれていない。よって、定常偏差(目 標値である入力信号の値に制御圧力が到達しない)が 発生する。また、供給圧力の変化とともにアクチュエー タの出力(流量)も変化してしまうため、上述の定常偏 差が供給圧力などの製品動作条件により変化するとい う欠点であることを表している。  この欠点は、市場要求が“入力信号に対して比例に 制御すること”から“入力信号に対して高精度に制御す ること”に変化してきている近年の市場では大きな課 題となっていた。 Fig. 10  制御ブロック図 (外部センサ) 8 CKD 技報 2018 Vol.4
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【巻内特集】 電空レギュレータ技術 5 制御性能の評価  従来制御(Fig. 8)と新制御(Fig. 9)での比較試験を実 施した。同じ入力信号を繰返し加えた際の制御圧力の 変動を評価する繰返し性試験をFig. 11に示す。また、 一定の入力信号を印加した状態で供給圧力を変動させ た際の制御圧力の変動を評価する供給圧力特性結果を Fig. 12に示す。 Fig. 11  繰返し性 試験結果 Fig. 12  供給圧力特性 試験結果 執筆者プロフィール  本結果より繰返し性試験、供給圧力特性ともに約 70%の性能向上が確認できた。 6 おわりに  当社の電空レギュレータの高精度化技術の紹介を 行ってきたが、年々、市場からの要求は高精度化・高寿 長崎 功 Isao Nagasaki 命化など多岐に広がっている。今後も産業のさまざま コンポーネント本部 制御システムBU 技術部 Engineering Department な分野で利用していただけるよう、本稿で紹介した制 Fluid Control System Business Unit 御方式にこだわらず、更なる製品の改良・開発を重ね、 Components Business Division シリーズの展開を行うことにより産業の発展へ貢献し たいと考えている。 ■出典■ 出願番号:特願2013-095182 CKD 技報 2018 Vol.4 9
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巻内特集 テーマ「高精度」 精密加工に求められるリニアステージ技術 Linear Stage Technology Required for Precision Machining 伊藤 文夫 Fumio Ito        自動化、省力化を推し進めることのできるFA装置には位置決め機構(ステージ)が多く使われている。なかで も精密加工装置用のステージは高精度化が進んでおり、加工時の位置決め精度や速度安定性が求められている。 当社では機電一体の設計思想のもと位置決め精度と速度安定性の向上を実現した。本稿ではこれらについて紹 介する。 In FA equipment that can promote automation and labor-saving measures, positioning mechanisms (stages) are often used. In particular, stages for precision machining equipment are becoming increasingly more precise, and positioning accuracy and speed stability are required during the machining process. At CKD NIKKI DENSO, improvements in positioning accuracy and speed stability were achieved by adopting the design philosophy of integrating mechanical engineering with electronics. This paper presents an overview of the linear stage technology. 1 はじめに 置することで固定側と移動側に相対的な力を発生させ 移動側を駆動させる構造となっている。  近年顕在化してきた人手不足の問題に対し、自動化、  これに加え当社製高性能サーボドライバと高分解 省力化を推し進めることのできるFA装置に対しての 能リニアエンコーダの組合せにより、フルクローズ 需要は高まる一方である。FA装置には位置決め機構 制御を行った精密な位置決めと高応答動作性能を可 (ステージ)が多く使用されており、FA装置の一つであ 能とするダイレクトドライブステージ製品となって る精密レーザ加工装置でも、精密移動などにステージ いる。 は使用されている。  レーザ加工は、既存の刃物による加工方法から置き 換えるなど新たな適用事例が広がっており、市場が広 がっている。さらに、レーザ加工を行う際の加工精度 の要求も高くなってきており、当社でも精密レーザ加 工装置向けに位置決めステージとしての要求が多く なっている。  この装置に求められる性能として具体的には、位置 決め精度と速度変動率の良さが求められる。  たとえば穴あけのピッチを1μmの誤差以内で加工 していく要求に対しては位置決め精度が重要となる。 また、レーザの照射ムラの低減にはワークを移動する 際の速度変動をより少なくすることでワークへの照射 Fig. 1  リニアモータステージ構成要素 エネルギーを均一に与えることができるため、その速 度変動率の低さが重要な性能となる。  そこで、このような超精密加工に求められるリニア  本製品はユーザにて仕様検討の際の多種の要望に モータステージの概要と技術について紹介する。 応えられるよう、カタログ上でモータ容量、ストロー ク、エンコーダ分解能などを自由に選べるようにして 2 ステージについて いる。  また、ステージの用途としては形状変更やストロー 2-1 ステージの構成要素 ク変更などのカタログ仕様以上の要求もあり、カタロ  ステージを構成している要素部品を示す(Fig. 1)。 グ製品に対してカスタマイズして柔軟に対応すること  駆動にリニアモータを採用しており、リニアモータ も多い。 は、一般にステージの固定側であるベースにマグネッ  Fig. 2~ 5はその対応事例の一部である。 トを敷き詰めたマグネットベースを固定し、移動側に 巻き線コイルを樹脂モールドしたコイルユニットを配 10 CKD 技報 2018 Vol.4
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【巻内特集】 精密加工に求められるリニアステージ技術 Fig. 2  ジャバラ仕様 Fig. 3  XYθ仕様(当社薄型DD使用) Fig. 4  石定盤除振台付き Fig. 5  大中空径回転ステージ(当社円弧型リニアモータ使用) 2-2 リニアモータステージのメリット ・環境性の向上  位置決め機構を有するスライドテーブルは世の中に  中間機構が不要になるため、機械的な騒音が減少 ボールねじやラック&ピニオン駆動など多種存在する する。また、中間機構部の摩耗による粉塵もない為、 が、リニアモータステージのメリットを以下に示す。 クリーン化が図れる。油圧からの電動化の場合は、 ・機械性能の向上 油漏れなどが無くなり、環境性、安全性が向上する。  ボールねじには必要なカップリングなどの中間機 ・メンテナンスの軽減 構が不要になるため、駆動系の剛性が高まり、機械  中間機構の破損、調整、摩擦寿命による交換など 共振点を高めることが可能となり、サーボモータの のメンテナンスが不要となる。 制御特性をダイレクトに機械装置に反映させること ・長距離駆動 ができる。  長尺のボールねじステージで懸念されるたわみ、  これにより、応答性能、速度安定性能、位置決め 機械共振点の低さがない為、長距離かつ高速の動作 精度などの機械性能が大幅に向上し、装置の高品質 が可能となる。 化、高生産性などが可能となる。(Fig. 6)  これらが、一般的なリニアモータステージの特徴で あるが、具体的な事例として超精密加工のためにス テージに要求される要素である位置決め精度や速度変 動率の向上のための事例を紹介する。 3 位置決め精度の向上 Fig. 6  ボールねじとリニアモータ駆動ステージ 3-1 支持剛性の向上 ・省スペース化  一般的にXYステージは1軸ステージ2台を直交して  中間機構が不要になるため機械の小型化、設計自 単純に積み重ねただけのスタック構造となっているも 由度が向上する。特にスライドテーブルが複数(多 のが多く、この場合単軸ステージを設計するだけで容 ヘッド)必要な場合には、機構の小型化が大幅に可 易に多軸ステージを構成できるという利点がある。し 能であり、リニアモータのメリットが活かせる。 かし、XY軸構成とした際に上軸ベースフレームの支 CKD 技報 2018 Vol.4 11
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持点が狭いためにテーブルスライド時の荷重位置変化 外形寸法が小型のものを採用することで、リニアモー による構造体の変位が大きくなるデメリットがある。 タとエンコーダの配置が極力同一線上になるよう配置  これに対し当社ステージはXYのスタック構造にお 設計している。 いて同じ1軸ステージを2台積み重ねる構造ではなく、  また、自社開発の薄型でかつ推力密度の高いリニア XYの上軸ベースフレーム構造体の支持点位置を最適 モータを採用することで、重心を低くしつつ必要な推 化することでテーブルスライド時の荷重位置変化によ 力を確保することが可能となっている。 る構造体の変位を低減させている。この反面、各構成  さらにXYθステージとする際にも小型、薄型DDモー 部品を最適化するために部品の共通化が難しく組立工 タのラインアップより適する容量のDDモータを搭載で 程も複雑となり手間のかかるものになってしまうが製 きることからテーブル面のローハイト化が可能となる。 品の剛性向上のためには必要であり設計の基本として つまり、同一線上かつ近くに配置することで限りなく同 いる。(Fig. 7) 軸上に近づくことからアッベ誤差が大幅に低減されて いる。また、ローハイト化により低重心も達成できス テージの剛性が高くなり制御特性も向上される。 Fig. 8  モータ駆動位置とエンコーダ位置、     テーブル重心の近接化 3-3 テーブルの走り精度の向上  高精密加工には、テーブルが移動する際の走りの軌 跡の真直度や設置面に対する平行度、テーブル面の角 度変化量の指標であるピッチ、ヨーの姿勢精度なども 重要である。(Fig. 9) Fig. 7  XYステージ支持構造の違い 3-2 アッベ誤差の低減  寸法や位置の計測において精度を高めるためには、 測定物と測定器を同一軸上に配置する必要があるとの アッベの原理に従うことが望ましいとされている。 Fig. 9  ステージ機械精度  しかし一般的なXYステージでは駆動源のリニア モータ部と位置検出のリニアエンコーダの位置を進行  走り精度の高精度化のためには、次の3項目が重要 方向に対して同一軸上に設置することは困難なため、 である。 アッベ誤差はどうしても避けられない。 ・ステージ構造体の剛性確保  アッベ誤差の低減のためには、  剛性確保のためには質量増が避けられないが、 ・モータ駆動位置とリニアエンコーダ位置を同一線 構造体の最適な支持点設計により質量増加を抑え 上にする つつ剛性を上げている。さらに、同じ質量条件でも ・モータ駆動位置とテーブル重心を同一線上にする 断面性能がより高くなる断面寸法を設計解析で導  などが有効である。 き出すことでも軽量でありながら剛性の向上を実  当社のXYステージではリニアエンコーダヘッドの 現している。 12 CKD 技報 2018 Vol.4
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【巻内特集】 精密加工に求められるリニアステージ技術 ・直動軸受の設置位置の最適化 3-4 温度上昇の低減  直動軸受のレールの設置スパン、スライドブロッ  温度上昇による熱膨張の変化も、位置精度が変化し クの設置間隔によって走り精度は大きく影響を受け てしまうため超精密加工には障害となる。 る。このため小型軽量化を確保しつつ、直動軸受の  この対策として水冷リニアモータを開発しステージ 配置寸法を最適化することで走り精度の高精度化 に採用している。 を実現している。  リニアモータの特徴である非接触駆動により、接触 ・直動軸受の組付け精度向上 部分が少ないためステージにおいて主な発熱源は少な  直動軸受の組付け精度は、テーブルの走り精度に く、コイル部が主となる。この特徴のために冷却部を 直接現れてしまう要素である。 集約しやすく発熱の排除が容易にかつ、効率的に熱量 を取り除くことができる。  直動軸受の取り付け精度の把握のために当社では真  ここでコアレスリニアモータNLD-AM40型(最大 直度測定器を自社開発しステージの組み立て工程に適 500N)にて負荷率44%運転時の温度変化の一例を示 用している。これにより直動軸受の取り付け精度の把 す。(Fig. 12) 握が現場で容易に可能となり、テーブルの走り精度の  ステージの温度上昇を自然空冷時8.9K上昇に対し 高精度化を実現している。 て、水冷時0.7K上昇に低減しており、同時に低熱膨張  これらにより、多種ある直動軸受の中でユニット化 のリニアスケールを採用することでステージの1m当 され扱いやすく比較的安価と言われているボール転動 りの熱膨張量を自然空冷時5μmから水冷時0.5μm 式のリニアガイドを採用しつつ、走り精度の高精度を の精度に向上することが可能となった。 達成している。その一例として、テーブル幅220mm、   動作ストローク1000mmという長いストロークにお いて真直度2μm以下、姿勢精度ピッチング、ヨーイン グ5秒以下を実現している。(Fig. 10、11) Fig. 12  冷却方式の違いによる温度上昇比較 Fig. 10  テーブル真直度(水平方向、垂直方向) 3-5 リニアエンコーダの精度  リニアエンコーダは、等間隔に位置を刻んだスケール とそれを読み取るリードヘッドから構成されている。  リニアエンコーダで検出される位置の精度は、ス ケール自体のピッチ誤差により誤差が発生する。  この誤差は、スケールに刻まれている目盛の間隔の 誤差であり、採用するスケールの精度等級にもよるも のである。いずれにしてもこの誤差は避けられないた め、ステージ出荷時に位置決め精度をレーザ干渉式距 離計で測定し、位置決め精度を補正することで位置決 め精度1μm以下を実現している。(Fig. 13)  また、ユーザの現場での温度などの設置環境が大き く異なることもあるため、そのような場合にはステー Fig. 11  テーブル姿勢精度(ピッチング、ヨーイング) ジ設置後の位置決め精度補正作業も行っている。 CKD 技報 2018 Vol.4 13
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 この他に、サーボドライバの電流制御の分解能、精 度、キャリア周波数を上げることでも速度変動率の向 上を実現している。制御も自社開発のメリットを活か し追加機能など容易に組み込みでき、トルクリップル 補正機能やフィードバックフィルタ機能などの速度変 動率向上のためのドライバ調整パラメータも用意され ている。 5 おわりに  以上のように、本ステージはお客様の望む超精密加 Fig. 13  位置決め精度の補正機能 工用ステージに対応できる製品構成になっている。この 他にも特徴として、配線設計が面倒なケーブルキャリア 4 速度変動率の向上 が標準で設置されていることや、サーボモータのゲイン チューニングが出荷時点で実施されているなどユーザ  レーザ加工品質の安定のためにはステージの速度変 が即時にステージを使用可能な製品となっている。 動率の良さも重要である。  ユーザに本ステージを採用いただくことで装置中の  速度変動を低減するために、モータでは磁束の最 ステージ部分のユーザの設計、組立の工程を大幅に省 適化などを行うことでトルクリップルを低減させて 略することができる。 いる。  今後、生産技術の高度化、多様化、更にはプロセス技  また、速度変動率が要求される場合には、鉄心コア 術の進展によりますますリニアステージへの要求は高 型リニアモータではなくコアレスリニアモータが有利 まっていく。創業以来の企業理念である機電一体の製 である。 品開発を推し進め、CKDグループの一員として社会の  モータ推力をモータ体積で除した単位体積あたりの 自動化に寄与していきたいと考える。 推力は鉄心コア型リニアモータのほうが優れるため高 加速度動作には有利であるが、ユーザの動作パターン を検討したうえでモータ能力計算を行い、加速性能と 速度変動率のバランスを考慮してステージにコアレス リニアモータを採用することが多い。  一例として、速度10mm/s時において測定サンプリ ング50Hz時に速度変動率がコア付リニアモータ:± 0.25%に対して、コアレスリニアモータ:±0.08%であ り、コアレスリニアモータを採用することで速度変動率 が向上している。(Fig. 14) 執筆者プロフィール 伊藤 文夫 Fumio Ito CKD日機電装㈱ 技術部 LD技術課 Linear & Disc motor Development Division Fig. 14  速度変動率の比較 CKD NIKKI DENSO CO., LTD. 14 CKD 技報 2018 Vol.4
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薬品用ブリスタ包装機におけるGS1データバーの現状と将来展望 薬品用ブリスタ包装機におけるGS1データバーの現状と将来展望 Present Situation and Future Prospect of GSI Data Bar on Pharmaceutical Blister Packaging Machine 野田 尚彦 Naohiko Noda  当社が開発してきた薬品用ブリスタ包装機内でのインライン印刷の使用目的は様々であり、新バーコード表示以外 にも、有効期限、製造番号の直接印字、海外出荷に対応した多言語表示、更には製剤見本の表示等がある。当社としては、 それぞれの使用目的に応じて、印刷技術をさらに改善、改良していく。当社が開発したインライン印刷装置は連続運転 が可能なようにカスタマイズしており、バーコード検査装置も独自開発をした。しかしながら課題もまだあり、今後も 継続して改良に取り組んでいく。将来展望としては、PTPシートごとにシリアル番号を付与することによって、シート 製造時の諸条件や製剤の情報等も管理できるようになり、製造工程起因とされる市場クレームや医薬品取り違えによ る医療事故を撲滅できると期待している。 In-line printer on our pharmaceutical blister packaging machine is used not only for printing a new bar code but for directly printing expiry date, manufacturing No., indicating in multi-languages for export, and furthermore indicating product sample etc. We are going to proceed improvement of printing technology to meet respective purpose of printing. In-line printer we have developed is customized to realize continuous operation, and bar code inspection machine has also been developed by ourselves, however, there are some issues to be solved, which we will continuously work on. Future prospect would be to give a serial number to each blister sheet to enable to manage its production condition, information on formulation etc. and we would like to expect to eliminate market complaints resulting from production process and medical accident by drug mix-ups. 1 はじめに 製薬団体連合会による「医療用医薬品新コード表示ガ イドライン」においても、包装形態ごとの技術開発等に  平成27年7月以降に製造販売業者から出荷されたも よっては、調剤包装単位においても任意表示から必須 のから、調剤包装単位のバーコード表示の実施が始ま 表示への改定の可能性もあることが示唆されていた。 り、医薬品の取り違え事故の防止およびトレーサビリ そのような背景もあり、当社においてはPTPシートへ ティの確保、そして医薬品流通の効率化が期待されて の有効期限および製造番号または製造記号の変動情報 いる。また平成27年9月に厚生労働省において「医薬 に対応した新バーコード(GS1データバー()Fig. 1)を 品産業強化総合戦略~グローバル展開を見据えた創薬 効率良く表示するには薬品用ブリスタ包装機内で印刷 ~」が策定され、急速な後発医薬品の使用促進に伴い、 するのが最良であると提唱してきた。その結果、当社 安定的な供給維持の為には流通体制見直しが不可欠と の技術開発を理解された特定製薬企業に対してインラ 提唱されている。 イン印刷装置を製造販売してきた。  それらを受けて平成28年8月に厚生労働省から「医 療用医薬品へのバーコード表示の実施要領」が一部改 定された。その内容は元梱包装単位および販売包装単 位の生体由来製品を除く内用薬、注射薬及び外用薬に おいても有効期限および製造番号または製造記号が任 意表示から必須表示と改定された。そして当時の実施 要領のまま調剤包装単位においては特定生物由来製品 以外は有効期限及び製造番号又は製造記号は任意表示 のままとなった。 Fig. 1  GS 1 データバーのシンボル体系 2 PTPシートにおけるGS1データバーの使用目的  しかしながら、そのインライン印刷装置の使用目的  当社においては数年程前から調剤包装単位である は様々である。当社が独自に行った製薬企業向けのア PTPシートに対して薬品用ブリスタ包装機内でのイン ンケートによると、変動情報に対応した新バーコード ライン印刷の技術開発に取り組んできた。当時の日本 表示以外にも、有効期限、製造番号の直接印字、海外出 CKD 技報 2018 Vol.4 15
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荷に対応した多言語表示、更には製剤見本の表示等が ある。特に製剤見本においては、医療担当者が当該医 療用医薬品の使用に先立って、剤型及び色、味、におい 等の外観的特性について確認する事が目的とされてお り、「製剤見本」と表示がされなければならない。また、 その提供量は必要最小限度であり反復提供を行わない こととされている。つまり製剤見本用に製造する包装 形態は専用包装でかつ最小限で製造される。その際に 「製剤見本」の表示をPTPシートの蓋アルミ側に印字 する必要があるが、そのために製版をしており必要最 小ロットで製造しても、大抵の場合は製剤見本用とし Fig. 2  フレキソ印刷装置 て印刷された蓋アルミの残りは廃棄することになる。  この無駄をなくすことを目的にインライン印刷の需 に製造番号をインラインで印刷するケースも出てき 要があることが分かった。製造効率の良い蓋アルミの た。ただしレーザマーキングでは印刷可能範囲に限度 製造方法としては、製剤見本用の蓋アルミとして製版 があり、PTPシートに印字する際には印字場所が特定 をするのではなく、医療用として流通する製剤用とし される。その結果、ほとんどのPTPシートにおいてト て蓋アルミを製版して印刷しておき、薬品用ブリスタ レーサビリティはPTPシート上に刻印されている製造 包装機内で製剤見本を製造する際に、インライン印刷 番号のみとなっている。 装置を使用して、余白に「製剤見本」と印刷する方法で ある。その際に製剤見本は原則としてバーコード表示 4 インライン印刷における最新機能 をしなくて良いとされているため、既に蓋アルミに印 刷されているバーコード表示を判読できないように  当社においては、医療用医薬品取り違え事故の防止 バーコードを横断する線も印刷することも出来る。こ のほか、ロット・有効期限管理、在庫管理などトレーサ うするとことによって、わざわざ製剤見本用に蓋アル ビリティの確保や医療用医薬品の流通効率化が推進さ ミの製版をすることなく、製剤見本の情報提供が終了 れるよう、インクジェット印刷装置メーカと協力して、 次第、そのまま医療用として製造販売できる。 PTPシートの全面に新バーコードが配置されても良い  当社としてはPTPシートにおける新バーコードの変 ように幅広対応の印字ヘッドを搭載した装置を開発し 動情報の普及を予測して、インライン印刷の技術開発 た(Fig. 3)。また、その印刷状態を検査するバーコード を行ってきたが、各製薬企業が当社のインライン印刷 検査装置を独自開発した(Fig. 4)。これらの装置には当 技術を理解し、それぞれの目的に応じて使用されれば、 時の課題を克服するための技術が盛り込まれている。 それはそれで幸いである。むしろ、それぞれの使用目 1)印刷表示変更はPC等の上位から簡単に変更可能 的に応じて、印刷技術をさらに改善、改良していく使 2)デジタル印刷なので版は不要 命がある。今後、製剤見本においてもインライン印刷 3)ランニングコストは消費電力とインクのみ の需要が増えるのであれば、さらに改良しなければな 4)PTPシートの全面にあらゆる印刷表示が可能 らない技術もあると考える。今後は市場の反応を見な (Fig. 5) がら、さらに技術を進歩させていく。 5)バーコード検査はPTPシートのどの位置にバー コードがあっても検査可能 3 薬品用ブリスタ包装機におけるインライン印刷の歴史  国内におけるインライン印刷の歴史は20年程になる。 当時は印刷品質の良さや簡易性などの理由でフレキソ印 刷装置が主に使用されていた(Fig. 2)。ただし、その後フ レキソ印刷装置を使用したインライン印刷は国内では普 及しなかった。その理由は以下にあると推測する。  1)版の交換およびインクのクリーニングが面倒である  2)ロットごとに製版する必要がある  3)製版する度にランニングコストが掛かる  4)初期投資が大きい  以上の理由により、フレキソ印刷装置はほとんど普 及しなかった。その後レーザマーキングの普及ととも Fig. 3  インクジェット印刷装置 16 CKD 技報 2018 Vol.4